前回は車両内装の紹介で終わってしまいましたが、今回は運行の様子をリポートしていきます。参加者の皆さんからもWEB掲載の御許可はいただけたので、まずは運行中の車内の様子から。

この引退記念企画自体の見所はたくさんあるのですが、やはり車内の様子を撮影される方がたくさんいらっしゃいました。この日はクモハ103の走行音を楽しむため、車内でのアナウンスもやや控えめにされたとか。

乗務員室の方へ向かうと、窓から覗く路線や遠ざかるトンネル入口の光を堪能出来ます。座席から海を眺めるのも良いのですが、晴れていればもっと美しかっただろうにと悔やまれますね。

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停車中のクモハ103。この時点ではかなり雨脚も強くなっていたのですが、撮るチャンスは今しかねえ!とばかりに皆さん外に出てばっちり撮影されていました。

片瀬白田で折り返したクモハ103は雨の中伊豆急下田駅へ。

名残惜しむかのように車両の写真を撮影して今回の乗車企画は終了。明日7月5日の参加型企画、7月6日の事前予約型の特別乗車企画、そして7月7日(日)のラストランをもってクモハ103は引退となります。

そもそも伊豆急行のクモハ103ってどんな車両?


※運転士の稲葉さん

今回引退するクモハ103は、伊豆急行線を開業当初から支える「伊豆急100系電車」の最後の生き残りとも言える車両です。伊豆急行のシンボルとして鉄道ファンの間で親しまれています。

22両からスタートした100系電車は最盛期には53両が活躍していましたが、1990年代ごろから車体の腐食や機器の老朽化が顕著になり、リゾート21などの後継車両へ置き換えられていきました。最終的に2002(平成14)年までに100系電車はほぼ全て廃車となりました。

最後に残ったのがクモハ103です。この車両は現代では希少な「両運転台」であったため、伊豆高原内の車庫における車両入れ替えのための牽引車として現役引退後も活躍していました。

そんなクモハ103が営業車として復活したのは伊豆急開業50周年時のこと。以来、団体用の貸切列車などの用途で活躍し、乗車された鉄道ファンには特に可愛がってもらった、と関係者は話します。

しかし時代の波には抗えません。伊豆急行ではATS-S型からATS-P型への更新工事が進んでおり、安全設備の更新が難しいクモハ103は、もはや伊豆急全線を走行することままなりません(今回片瀬白田で折り返す理由もここにあります)。そうした事情から、クモハ103は今年2019年7月7日をもって引退することになりました。

冷房もついていないので夏は暑く、暖房の効きも悪いので冬は寒い。電車につららが出来ることもあったとは運転士の稲葉さんの言。伊東まで出るのにおよそ1時間、着いた頃にようやく温かくなってきて、車掌に「ちょっとここを触ってみろ」と言われて実感した時代もあったとか。

それでも8000系のような東急の車両と違い、クモハ103はまさしく”伊豆急行の”車両。一度は引退を経験したこともあり、安全面も考慮すると「(廃車は)時代の流れかなと思った」とは言うものの、やはり長年親しんできた車両の引退には若干の寂しさもあるようです。

引退後は解体されるのか、静態保存か、それとも再び牽引車に戻るのか……そのあたりはまだ決まってはいないようですが、どのような形であれ伊豆急行の屋台骨であった名車がまた見られる日が来てほしいものですね。