※2014年7月撮影

2016年(平成28年)12月で留萌駅から増毛駅までの16.7kmが廃止され、留萌本線は深川駅から留萌駅までの50.1km、JR九州の筑豊本線(66.1km)を抜いて”本線”を名乗る最短路線になりました。

筆者は、もう一度2016年9月、留萌~増毛間廃線の三ヶ月前に留萌本線に乗っています。その時は流石に鉄道ファンがたくさん乗っていて、運転士さんは「ふだんから、こんだけ人が乗っていれば廃線にはならなかったのにね」と苦笑していました。

ADVERTISEMENT

※2014年7月撮影

コラムで留萌本線、駅ごとの住民の数を書いたのは、JR北海道が「当社では維持することが困難な線区について」などの路線廃止関連文書を連発していることと若干関係あります。というのは、筆者は個人的にですが「JR北海道だけでこの窮状をどうにか出来る」とは全く考えないからです。これについて筆者は、2016年に鉄道チャンネルに短いコラムを書きました。

※2014年7月撮影

そもそも北海道自体の人口減少に全く歯止めがかかっていません。日本全体が少子高齢化でゆっくりと緩慢に萎縮・衰退することは確かですが、就中、北海道がその現象の先端部分(モデルケース)であると思われるのです。

このままJR北海道だけに全てを任せて、路線の5割を廃線にしてしまっては取り返しがつきません。

例えば、上の北海道は1979年(昭和54年)、下は2020年(令和2年)です。既に路線距離は半減しています。

さらにJR北海道が「独自では維持できない」路線と北海道新幹線で経営分離される路線を消すと、残るのはこれだけになってしまいます。バス転換? 既に運転士不足で運行できなくなっているバス路線すら現れています。

国鉄分割民営化の是非を問うことは今さら無意味ですが、個人的にJR東海が東海道新幹線の利益(年間の営業利益が5600億円)をリニア新幹線に投資することの無意味さについて何度も発言させていただいています。

人間を500km運ぶ為に一般家庭の1年間分の電力を消費することも論外ですが、現状の新幹線で充分な移動効率ではないでしょうか? 東京~名古屋間、現状の96分を40分にすることに総工費で約9兆円もの投資が合理的とは、とても思えないのです。

※2014年7月撮影

しかし、いったん廃止してしまった鉄道を敷き直すことは凄まじい費用・労力がかかります。リニア新幹線にかける費用で赤字のローカル線を最低限のコストで維持したらどうかと筆者は考えます。

後ろ向きだとおっしゃるかも知れません。

しかし、モータリゼーションに浮かれて路面電車を拙速に廃止してしまった自治体は、ヨーロッパの都市で今も合理的かつ安価に住民を移動させているトラムの有効性・経済性を考えたことがあるのでしょうか?

筆者は、ミラノ、ウィーン、ミュンヘン、イスタンブールなどの街でトラムに乗りました。トラムが大好きなのでリスボンにも乗りに行こうと目下計画しています。

※2014年5月撮影:ウィーン

少子高齢化で産業や生活の構造は間違いなく変化します。「前向き」も「後ろ向き」もないのです。希望的な予測がひじょうに困難な未来が現実的に北海道を襲っています。

近未来にむけて、細々とでもローカル線を維持しておけば、コスト配分によって交通インフラを経済的に活用できる可能性があると考えます。可能性としてもローカル線によって最低限の観光インフラが維持できるのでは?

石川県輪島市への鉄道が廃止されたことによる市民生活への影響を研究した日本土木学会のレポートでも、半分近い住民が商業に悪影響があったというアンケート結果になっています。筆者も鉄道で輪島に行ったことはありますが、航空機で行こうとは思いません。

※2014年7月撮影

しかし、この様な施策は、国家的な規模での計画が不可欠です。

2019年度の決算数字(JR北海道発表)でJR北海道の売上は1710億円(連結)。鉄道会社で言えば21位の静岡鉄道(1762億円)よりも少ないのです。静岡鉄道の営業キロは11.0km、もちろん鉄道事業以外の売上が大きいのですが、JR北海道の営業キロは2488.3km。

営業キロが2273.0kmと若干短いJR九州の売上は、JR北海道の約2.6倍、4403億円なのです。

上記の数字を見ても、JR北海道1社に北海道の長大な赤字ローカル線を全てコントロールしろという方が間違っていると思います。

※2012年7月撮影:ミュンヘン

今回は筆者の個人的な意見を開陳いたしました。大好きな北海道のローカル線が消えて行くのを座視できないのです。

廃線になった羽幌線沿線出身の友人がいます。彼の話では、羽幌線が廃止になってから沿線に住んでいた親戚は全員が他の場所に移り住んでしまったとのこと、昔住んでいた町々は限界集落や消滅集落になったそうです。国勢調査でも昭和40年(1965年)に30,266人だった羽幌町の人口は、平成27年(2015年)には7,327人(24.2%)と4分の1以下に減少しています。もちろん、羽幌線が存続していたら人口が維持されたとは言いませんが、友人曰く「鉄道が無いので気軽に故郷に帰ることができなくなった」と嘆いていました。

鉄道という産業を国家ぐるみで細々と維持運営することは、少子高齢化で人口減少が加速する日本で産業人口や社会活動を維持していくための迂遠ではあるけれど、合理的な方法ではないかと思っています。

以上は、全て筆者個人の考えです。失礼いたしました。

※筆者は既にコラムなどで今回の青春18きっぷ鉄道旅の写真を度々使用しています。重複していますが、御容赦ください。

※価格などは2014年当時のものです。

(写真・文/住田至朗)