同時に集めて、同時に散らすダイヤ

スイスの都市間高速列車「インターシティ」は最高時速200kmで運転。車両は2階建てという特徴があります。 写真:crossborder / PIXTA

利用しやすさのシンボルが、2大都市のチューリッヒ、ジュネーブの中間にあるビール/ビエンヌ駅。ここにはチューリッヒ、ジュネーブのほかベルン、ローザンヌといった8都市からの路線が集まります。ダイヤは同方向8本の列車の到着・発車時刻をそろえ、わずかの待ち時間で乗り継げるように工夫します。広大な駅構内に8本の列車が並ぶ光景は壮観そのもの。「同時に集めて、同時に散らすダイヤ」と表現されたりします。

一般路線もダイヤを工夫します。長距離列車と近郊列車を組み合わせ、1時間当たり2本、30分に1本は列車が来るようにダイヤを組みます。日本も同じですが、30分以内に列車が来れば利用者は「待たされた」という感覚を待たなくてすみます。

運賃の計算方法も独特です。日本は最短ルートで計算しますが、スイスは遠回りのルートで算出します。少々高額の運賃を支払っても、国民全体が支えることで連邦鉄道の経営を成り立たせているのです。

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大内教授は、すべてを鉄道に頼るのでなく、場合によっては代行バスを走らせるなどスイスの合理的な考え方も紹介。日本の鉄道に応用できる点として、「難しいかもしれないが、列車をある程度の頻度で走らせれば鉄道に対する抵抗感を解消できるのでは……」と提起します。

スイスの鉄道についてもっと知りたい方は、大内教授の著書「時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス」(交通新聞社新書)をどうぞ。

レーザースキャナーと鉄道用電子機器

ライカジオシステムズのトンネル計測イメージ 画像:ライカジオシステムズ

最終章は、日本法人を置くスイスの鉄道部品メーカー2社をご紹介。ライカジオシステムズはおよそ200年の歴史を持つドイツの高級カメラメーカー・ライカの関係会社で、線路保守に有用な3次元レーザースキャナーを日本向けに輸出します。線路の歪みやトンネル内壁などをレーザー計測し、補修の必要性を判断します。最近は、航空機搭載型のセンサーも商品化します。

ハスラーレイルのビジュアルイメージ 画像:ハスラーレイル

ハスラーレイルは鉄道用電子機器やセンサー、ディスプレイなどのメーカー。得意分野は鉄道車両の速度検知システムで、万一のトラブル発生時には原因を解析して、再発防止に向けた情報を鉄道事業者に提供します。センサーを駆使して車両を状態(常態)監視するこれからの時代に、必要とされる技術系企業といえそうです。

文/写真:上里夏生