面倒な付帯費用なしで新車に乗れる

クルマや運転の楽しさを広めて若者のクルマ離れの解消を狙う自動車業界の「クルマサブスク」=イメージ=(マハロ / PIXTA)

ここからは自動車メーカーのサブスクを取り上げ、鉄道と比較しましょう。テレビ番組風にいえば、「同じ乗り物でもこんなに違う! 鉄道とクルマのサブスク」といったところです。

クルマのサブスクで最も知られるのは、トヨタ自動車の「KINTO」。キャッチフレーズは、「トヨタの新車を月々コミコミ定額で利用できる、クルマのサブスク」。コミコミの主な項目は任意保険料やメンテナンス費用、税金で、頭金も不要です。利用料金は小型車で月額1万円台から。期間は3、5、7年から選べます。

サブスクの目的は、ずばり若者の車離れ対策。昔は「18歳になったら運転免許」がステータスだったわけですが、最近は都市部を中心にクルマを持っていない、そもそもクルマに興味のない若者が増えています。そこで、保険とかメンテナンスとか面倒なハードルを下げて、とにかく若者にクルマに興味を持ってもらおう、ドライブの楽しさを知ってもらおうと考案されたのがクルマサブスクなのです。

自動車サブスクには付帯サービスがない

ADVERTISEMENT

鉄道と自動車の違いは、鉄道のターゲットがシニアなのに、クルマは若者。もう一つ、クルマには駅そばやシェアサイクルに相当する付帯のサービスがありません。メーカーが提供するのは、あくまで自動車だけということです。サブスク車で来店すれば、駅そばじゃなく、立ち食いそば1杯はありそうな気もしますが、それでクルマに乗る人が増えるとは、メーカーも考えていないようです。

苦心してサブスクを考案した担当の方に怒られてしまうかもしれませんが、サブスクはあくまでもオマケです。しかし、読者諸兄には子どものころ、オマケ目当てに○○チョコレートを買った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

鉄道事業者の場合、これまで紹介したように、ほとんどのサブスクが実証実験段階。MaaSの普及、さらには観光MaaSも含めて、例えばレンタカーやバス、タクシーといった、鉄道を降車後の目的地までのフィーダーアクセスや観光スポットを巡るルートバスなどをサブスクの定額で提供できれば、日本にも本格的な「交通サブスク時代」が訪れるかもしれません。

文:上里夏生