東京メトロ銀座線渋谷駅のホーム移設に合わせ公共施設を整備

移設前(左)と移設後を並べた東京メトロ銀座線渋谷駅ホーム(画像:土木学会)

前置きが長くなりましたが、ここから学会賞の紹介に移ります。優れたプロジェクトを顕彰する技術賞は全体で36件、そのうち10件を国内外の鉄道関係が占めました(受賞件名などは適宜簡略化しています)。

「渋谷駅東口の銀座線ホーム移設、地下広場・雨水地下貯留施設の整備」は、東京メトロ、東急、JR東日本の鉄道3社の共同事業。メトロ銀座線渋谷駅のホームが移設され、印象もガラリ変わったのは、多くの皆さんが体験済みと思いますが、もう一つのポイントは、地下広場や雨水地下貯留施設といった公共施設を鉄道と一緒に整備した点です。

渋谷駅には4社9路線の鉄道が乗り入れ、東西両側にバスターミナルがあって、1日利用客は約330万人とも。大正時代から開発が進められた結果、乗り換えでまごつく場面があったのは確かで、安全で快適な都市空間の創出、分かりやすい駅づくりを目指して再開発が進められました。

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渋谷は地名通り谷形の地形で、プロジェクト3社が力を入れたのが、垂直方向の移動をスムーズにする「アーバン・コア」。例えば、渋谷駅から青山方向に向かう場合、多くの人がお世話になるのが、東急「渋谷ヒカリエ」の長いエスカレーターです。

JR埼京線渋谷駅ホームをJR山手線ホームに横付け

2020年5月29日夜間から6月1日早朝にかけ、埼京線列車を区間運休して進められたJR渋谷駅のホーム移設(画像:土木学会)

渋谷駅絡みではもう一件、JR東日本と関東地方整備局が、JR東日本コンサルタンツなどと共同で手掛けた「JR埼京線のホーム移設」も、同じ技術賞を受賞しました。

山手線と埼京線の渋谷駅は、駅名は同じでも線形の関係で350メートル程度離れていましたが、JR東日本は2回の線路切り替えで埼京線ホームを山手線ホームに横付けしました。埼京線ホームの移設先には全長53メートル、総重量86トンの連絡通路がありましたが、JR東日本は工程を工夫して、列車を運行しながらの工事を実現しました。

JR東京駅で丸の内側と八重洲側の行き来を便利に

JR東日本ではもう一件、「東京駅北通路周辺整備」も選考されました。JR東京駅は、丸の内側と八重洲側の行き来が不便だったりします。東京駅は北側(神田寄り)の改札内と改札外に通路がありますが、それを改良するのがJR東日本のプロジェクトで、線路下で十分なスペースが取りにくい難条件を克服して駅改良に取り組みました。

東京駅は2015年の「上野東京ライン」開業で、東海道線と東北・常磐線の直通運転が始まったわけですが、JR東日本は上野東京ラインの鉄道と駅改良プロジェクトを一体的に進めました。若干専門的になりますが。駅改良では高架橋の縦はりや中間柱を省くとともに、雨水の排水に配慮した長スパンのけた式構造を採用して、二層高架橋による大規模空間を確保しました。