緊急アピールを発表する冨田日観振副会長(左から2人目)と後藤西武HD社長(同4人目)

日本観光振興協会(日観振)は2021年6月17日、ワクチン接種を加速させることで、国内外にわたる観光の復活や交流拡大につなげることを趣旨とする、「ワクチン接種に関する観光産業からの緊急アピール」を発表した。日観振には鉄道事業者も数多く参加。東京都内での会見には、JR東日本の冨田哲郎会長、西武ホールディングス(HD)の後藤高志社長(いずれも日観振副会長)が出席した。

「ワクチン接種が進行することで、旅行を感染拡大の一つの要因とみるような世の中の風潮が変わる。コロナが収束に向かうことで、国内と海外を合わせた観光復活への機運が醸成される(大意)」(山西健一郎日観振会長=三菱電機特別顧問)が総意。業界自らもワクチン接種を加速させるため、事業所などに会場を設ける職域接種に力を入れる。

日観振は観光事業者を中心に、観光関係団体や自治体など約700社(者)で構成する。中小企業も多いため、鉄道事業者や大手旅行会社が中心に立って職域接種に乗り出す。

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冨田副会長は、「JR東日本は、安心安全の確保とお客さまが安心して旅行できる環境を整えるため、現場社員を中心に職域接種に取り組む。2021年11~12月までに、約2万人への接種完了を予定している」と表明。「鉄道利用者はコロナ前に比べて4~5割減少しているが、接種が進めば回復にも弾みが付くはずだ」と期待を語った。

後藤副会長も、「西武鉄道のほか、プリンスホテルなど西武HD全体として接種に取り組み、最終的に約1万8000人への接種を予定している」とした。

さらに、日観振はワクチン接種歴を証明する「ワクチンパスポート」を発行して、観光回復につなげるプランを提唱した。

鉄道業界ではJR東日本と西武HDのほか、JR東海、JR西日本、JR九州、近鉄グループホールディングス、大阪メトロ(Osaka Metro)などが職域接種に乗り出す方針を示す。

文:上里夏生
写真:日本観光振興協会