現行の電気・軌道総合検測車 East-i(E926形)

JR東日本は7日、新たな新幹線専用検測車「E927形」の開発に着手すると発表しました。2029年度の導入が予定されており、AIやDXといった最新技術を駆使して、”究極の安全”の実現を目指します。

最高速度320km/h!次期秋田新幹線ベースの新在直通車両

新たに開発されるE927形は、同時に開発が進められている次期秋田新幹線(E6系の後継車)をベースとした車両です。最高速度は現行のEast-iの275km/hから大幅に向上し、320km/hでの高速検測が可能となります。

検測エリアは東北、上越、北陸の各新幹線に加え、山形・秋田新幹線にも対応。JR東日本が持つ5方面の新幹線ネットワーク全域で共通使用できる設計です。

車両のデザイン(カラーリング)は、JR東日本グループの社員から公募で選ばれます。山形新幹線の新型車両「E8系」のデザインも手掛けた「tangerine」社が監修し、選ばれたデザインを元に2026年夏頃を目指して実車に向けた細部のデザインを仕上げるといいます。

新たな新幹線専用検測車(E927形) 先頭形状イメージ(画像:JR東日本)

新型検測車 E927形の概要

車両形式:E927形
検測開始時期:2029年度(予定)
最高速度:320km/h
検測エリア:東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線、山形・秋田新幹線

AI・DXで進化する検測技術 省人化や自動運転も視野に

E927形にはAIやDXの技術を活用した最新の検測装置を搭載。高速走行に対応するとともに、省人化や遠隔からの無人検測の実現も目指します。将来的には営業車両と同様に自動運転の導入も検討するといいます。

軌道の歪みをより細かく、正確に把握

レールの歪みを測定する「軌道変位検測装置」は、現行方式では275km/hを超える速度での検測が困難という課題を抱えていました。新方式では、次世代新幹線開発試験車「ALFA-X」で培われた2次元レーザーによる多点測定技術を導入。床下の1つの装置にセンサー類を集約し、より高速かつ高精度なデータ取得を実現します。

軌道変位検測装置の変更(画像:JR東日本)

AIが架線の金具を自動検知

架線をつるす「電車線金具」の検査は、これまでは保守用車両から作業員が目視で行っていました。E927形では、新たに開発される「電車線金具モニタリング装置」を搭載。カメラで撮影した画像から電車線金具をAIが検知し、その画像をスクリーニングして電車線設備の良否の判定を行うことで検査品質の向上につなげます。

電車線金具検査の変更。装置は(公財)鉄道総合技術研究所の開発した技術をもとに検測装置をJR東日本研究開発センターで新規開発(画像:JR東日本)

トロリ線の摩耗状態を高精度に測定

パンタグラフが接触する「トロリ線」の摩耗状態を測定する装置も進化します。現行のレーザー光の反射による測定から、スリット光を照射し、その形状をカメラで撮影する方式に変更。これにより、トロリ線の断面形状や位置をより正確に把握できるようになります。

トロリ線条体測定装置の変更。装置は(公財)鉄道総合技術研究所の開発した技術をもとに検測装置をJR東日本研究開発センターで新規開発(画像:JR東日本)

JR東日本はこの新たな検測車を通じて、より安全で安心して利用できる新幹線輸送の実現に取り組むとしており、未来の鉄道の安全を支える新しい検測車の活躍に期待が高まります。なお、E927形および次期秋田新幹線車両の詳細な仕様は決まり次第発表される見込みです。

(鉄道ニュースや、旅行や観光に役立つ情報をお届け!鉄道チャンネル)

【関連リンク】