新幹線で「海が見える駅」

新たに新幹線の最西端駅となる長崎駅ですが、デザイン面でも非常に見所が多く、開業したら絶対に行きたい駅の一つだと感じています。中でも一番「いいな」と感じたのは、ホームから海が――長崎港が見えること。

西九州新幹線長崎駅は「新幹線・在来線双方が乗り入れる日本唯一の頭端駅」であり、新幹線や在来線は北から入線してきます。新幹線ホームの南端には車止めがあり、その先にデッキ(海の眺望広場)が設けられています。北を向けば入線してくる新幹線の顔を真正面から眺められ、南を向けば長崎港が広がっている……

ホーム南端に設置されたデッキから長崎港が見える
逆に北を向けば、入線してくる新幹線を真正面から見られる

南北方向の「抜け」感の創出も計算のうち。2016(平成28)年に策定された「長崎県・長崎市『長崎駅舎・駅前広場等デザイン基本計画』」に「ホーム上の柱、架線・付属物などの配置や形状に配慮し、南北方向の『抜け』を創出することで、ホーム上から海の存在や雰囲気を感じることができるようにします」と記載されている通り、写真を見ても(少なくとも7月時点では)視線を遮るものが少なく、北から南、入口から終点まで海風も視線も通り抜けていくようです。

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屋根架構もまた「長崎駅舎」と「海」のイメージを意識したデザインです。同じ構造システムを連続させ、屋根の高さに変化を持たせることで海への方向性を演出します。新幹線駅としては初めて採用された膜屋根は、照明のランニングコスト低減や内部空間の温度管理などに一役買うだけでなく、来訪者を柔らかな光で迎え入れ、船の帆のイメージとも結びつくことで海との関連性を生み出します。

新幹線駅としては日本初ですが、在来線駅ではすでに膜屋根の採用例があります。写真はJR東日本「高輪ゲートウェイ駅」。こちらは障子や折り紙といった「和」のイメージ(写真:鉄道チャンネル)

「海の見える駅」といえばどうしてもローカル線の駅を思い浮かべてしまうもの。しかし新しい日本最西端の駅舎は、それらとはまた違った方向性で「海」を披露し、海外交流の拠点として栄えた「長崎」のイメージを感じさせてくれます。

文/写真:一橋正浩