クラウドファンディングで凸型ELに安住の地見付ける

鉄道ファンや地域住民のがんばりで、ピカピカによみがえった「ED314」

ここまで地方鉄道に共通する若干深刻な話題でしたが、本章では鉄道ファンの皆さんの心に刺りそうなトピックスを。全国大会in滋賀では、東近江市のびわこ学院大学地域調査プロジェクトチームの「近江鉄道ED314保存活用による地域性化~クラウドファンディグへの挑戦を通して」の発表もありました。

ED31は大正年間に制作された凸型電気機関車(EL)で、2004年に現役引退後も近江鉄道の車庫で保存されていたものの、同社は2017年に解体を発表していました。

びわこ学院大生がほん走して、保管場所は地元の近江酒造が本社用地を提供してくれることになりましたが、問題は資金。学生プロジェトチームは、500万円の経費をクラウドファンディングで調達することにしました。発表によると、2019年10月1日スタート、11月29日終了の約2カ月間で、クラウドファンディング以外も含め目標を大きく上回る700万円超の調達に成功しました。

トレーラーに載せられ近江酒造の敷地に入る「ED314」。車体にはかなりのさびが目立ちます

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返礼品には近江鉄道写真集や特製トートバッグ、コラボ日本酒など鉄道ファンの心をキャッチするグッズを用意。実際には2019年10月1日スタート、11月29日終了の約2カ月間で、目標を大きく上回る700万円超の調達に成功しました。

プロジェクトメンバーはクラウドファンディング終了後も、ED314の塗装イベントなどを開催し、旧形ELを地域の賑わい創出に役立てています。プロジェクトに参画した学生は、クラウドファンディングへの挑戦を卒業論文の題材にしたそうですが、果たして担当教授の評価はどうだったのでしょうか。

信楽高原鐵道に乗り入れ、やがては学研都市線に接続

さらに全国大会in滋賀では、運輸評論家で鉄道関係の著書も多い堀内重人さんが近江鉄道の将来像を展望しました。

米原駅から近江鉄道・信楽高原鐵道を経由し片町線に至る新線建設構想があり、仮称ですが「びわこ京阪奈線」と名付けられています。信楽駅―京田辺駅間に新線を建設し、大阪方面に向かう。関西圏は既に人口減少に転じており実現は難しいと思いますが、頭の中でJRと近江鉄道を相互直通運転させてみれば、夢(妄想?)が広がりそうですね。

全国大会in滋賀関係ではもう一回、京阪電気鉄道大津線などをめぐる話題を披露したいと思います。

文:上里夏生
(写真は特記のあるものを除き「人と環境にやさしい交通を目指す全国大会in滋賀」の発表を筆者がキャプチャしたものです)

2021年8月3日19時……分社化への言及に関する記述を修正いたしました。(鉄道チャンネル編集部)