愛される「ガチャコン電車」 滋賀の老舗私鉄・近江鉄道 「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会in滋賀」から【コラム】
戦時中には西武グループに
まずは、近江鉄道のプロフィール。路線は本線(米原―貴生川47.7キロ)、多賀線(高宮―多賀大社前2.5キロ、八日市線(八日市―近江八幡9.3キロ)の3線で、米原、彦根、近江八幡の各駅でJR東海道線、貴生川でJR草津線と、第三セクターの信楽高原鐵道に接続します(米原では東海道新幹線とJR北陸線にも)。
鉄道建設の理由は、江州米をはじめとする沿線産品の輸送、湖東地域と伊賀方面を結ぶ移動手段として。戦時中の1943年、箱根土地開発(現・プリンスホテル)の傘下に入ったことから、現在まで西武グループの一員。近江鉄道の車両は西武鉄道からの譲受車です。
3年後には経営の上下分離
地元で鉄道再生や利用促進の旗を振る山本さんの発表から、近江鉄道の近況を報告します。地元の人たちの愛称は「ガチャコン」。走る電車の音から生まれたそうですが、何とも味わいある呼び名です。沿線は彦根、近江八幡、東近江の各市など5市5町にまたがり、年間利用客は370万人ほど。数字は2020年度実績で、コロナの影響もあって2019年度に比べ22%も減少しました。
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地方鉄道の例に漏れず経営環境は厳しく、赤字が常態化。こうした状況に危機感を持った沿線自治体は2019年11月、「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」を設置。鉄道事業者(近江鉄道)と行政、有識者、利用者代表が一堂に会する協議会は、地域公共交通活性化・再生法(通称)に基づく法定組織で、2021年6月までに7回の会合が開催され、①近江鉄道線の全線存続と、②2024年度に上下分離経営への移行――が決まりました。
鉄道の上下分離は、鉄道を上物の列車運行と、線路や駅舎などの施設に分け、施設は自治体が保有、近江鉄道は運行に専念します。事業者は利用客数などに応じて線路使用料を支払えばいいので、負担は軽減されます。
地方鉄道では、同じ滋賀県の信楽高原鐵道、三セクの三陸鉄道などが採用。実は整備新幹線の北陸新幹線や北海道新幹線もこの方式で、JRは受益の範囲内で線路使用料を支払えばいいのです。近江鉄道の山田和昭構造改革推進部部長によると、