どうなる東京の地下鉄ネットワーク メトロ有楽町線延伸と品川新線は「早期の事業化を図る」 交政審答申を深読みすれば【コラム】

2021.07.31

東京メトロ有楽町線・副都心線用の新鋭17000系電車は、豊住線経由で東武スカイツリーラインに乗り入れるかもしれません(写真:鉄道チャンネル編集部)

交通政策審議会(交政審)は2021年7月15日、「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」を赤羽一嘉国土交通大臣に答申しました。いずれも地下鉄新線になる、東京メトロ有楽町線の豊洲―住吉間延伸線(豊住線)、メトロ南北線を分岐・延伸する都心部・品川地下鉄線(品川新線)は、両線とも「早期の事業化を図る」、東京駅から臨海部の豊洲、有明方面に延びる都心部・臨海地域地下鉄線(臨海地域新線)は「事業化に向けて、関係者による検討の深度化を図る」が結論です。

さらにメトロ株売却に関しては、「国と東京都が、同時・同率で全体の半数を売却する」と答申され、2004年の東京メトロの営業開始からの懸案だった株式上場に道が付きました。答申内容は、本サイトでも詳報されたほか、私も2021年2、5月のコラムで経過報告させていただいたので、ここではダブりを極力避け、答申のポイントともになぜ今、地下鉄ネットワークなのかを深読みしましょう。

(本稿は有楽町線延伸線は「豊住線」、都心部品川地下鉄線は「品川新線」、都心部・臨海地域地下鉄線は「臨海地域新線」の仮称・略称を使用します)

「新しい地下鉄は造らない」

2004年に営団地下鉄が民営化され、東京メトロに移管された際の有価証券報告書に記されていた、「民間企業の東京メトロは、これ以上の新しい地下鉄は造らない(大意)」が、答申の原点です。メトロ株はもっと早期に上場されても良かったのですが、国(国土交通省)と東京都の考え方の違いや株式市況の低迷で先送りされてきました。

メトロ株は国が53.4%、東京都が46.6%を保有、政府保有株の売却益は、使い道が決まっています。「復興財源確保法(略称)」という特別措置法で、東日本大震災復興債の償還に充てられます。復興庁の設置期限は当初は2020年度までとされ、その間にメトロ株は売却されるはずだったのですが、法改正で2030年度末まで10年間延長されました。

いずれにしても、政府分はいずれ市場放出されるので、東京都は完全民営化の前に地下鉄ネットワークの整備方針を決めてほしいと、国交省に要請。これを受けて国交省は、交政審陸上交通分科会鉄道部会に2021年1月、有識者による「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会」を設置。東京メトロや東京都の考え方を聞いて、今回の答申に反映させました。

メトロ株売却に都は慎重姿勢?

都の主張は、小委員会への提出資料が未公表のため詳細は不明ですが、豊住線や品川新線、臨海地域新線の必要性を示し、早期着工を求めたと思われます。

株式売却に関しては、メトロが純民間企業になってしまうと東京都の意向が経営に反映されにくくなることから、都は慎重だったとされます。そういえば、いつの間にか立ち消えになってしまいましたが、10年ほど前、都が国の持つメトロ株を買い取って、東京都交通局と東京メトロを経営統合するというストーリーが、まことしやかにささやかれたこともありました。

国と都、両方の顔を立てる

交政審小委員会は、東京都が求める豊住線と品川新線を、東京メトロが事業主体となって建設・運営する一方、国が求めるメトロ株売却に都も同意するよう双方の顔を立てる形で議論を進めました。最終的には、国と都は保有株を同じ割合で、全体の半分まで売却。残り半分は、メトロの経営を支える目的もあって、当面それぞれが保有し続けることで合意しました。

東京メトロが「新線を建設しない」としている点に関しては、要はお金の問題なので、小委員会は国や都による公的支援の必要性を指摘して、答申に盛り込みました。

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