品川駅高輪口全景。正面がJR駅、右側が京急駅。タクシーが客待ちする駅前広場はいかにも手狭です(筆者撮影)

少し前の話ですが、緊急事態宣言で通勤者が減ったとか、宣言の効果が薄れて通勤者が増えてきたとか――。そんなニュースのバックには、品川駅の映像がよく流れていたような気がします。西側にあるJRや京急の改札から東側の港南口には幅広い通路が伸びていて、テレビカメラを置いてもじゃまにならない。通路を行き交う人は、多くが駅近隣のオフィスに向かうビジネスマン・ウーマンということで選ばれたのでしょう。

そんなこんなをきっかけに、品川駅が気になり始めました。当初予定より遅れそうですが、やがてはリニア中央新幹線がやってくる。東京メトロ南北線も乗り入れることになりそうです。山手線田町―品川間では、JR東日本の大規模開発が進行中で、駅は大きく変わろうとしています。取材ノートを読み返しながら。品川駅や近隣の古い話、新しい話を集めました。

ブルトレが出発を待っていた巨大車両基地

鉄道ファンには、田町―品川間を走る山手線や京浜東北線の車窓から目をこらした経験をお持ちの方も多いでしょう。同区間には巨大な車両基地があって、いろんな列車が停車していました。例えば、夜行列車のブルートレインもここで出発を待っていたのです。

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車両基地の開設は1930年。当初の名前は「田町電車区」でした。国鉄からJR東日本になって、2004年には「田町車両センター」に。現在は「東京総合車両センター田町派出所」というそうです。面積は東京ドーム3個分弱の約13ヘクタールもあって、とにかく広い。

車両基地は鉄道会社には必要な施設ですが、何も都心一等地に置く必要はない。都心の土地は稼げるわけですから。車両基地を集約したりどこかに移して、跡地にいろんなビルを建てるのがJR東日本の品川再開発です。

JR東日本は2018年に「品川開発プロジェクト」の概要を発表。玄関口の新駅「高輪ゲートウェイ」は2020年3月、田町―品川間に開業しました。品川再開発をめぐっては、研究者が「世界的にも極めて重要な近代文化遺産」と評価する鉄道遺構の「高輪築堤」が見つかり、コロナ禍もあって開発計画の再検討もうわさされますが、当初計画では街開きは2024年の予定です。