大学がないのに学芸大学駅、その歴史とやさしい味
「学芸大? ああ! あの東横線の」とよくいわれるほど、東京学芸大学は東京都小金井市にあることを、あまり知られてない。
ちかくに大学があると思われている、そんな学芸大学駅を歩いてみると、いろいろ出会いがあった。
まずは道。ニュータウンやJR線の駅前とは違い、THE東京私鉄沿線という感じの駅前で、道が狭く、一方通行路が多い。「クルマは入ってこれないな」と思う路地もあちこちにある。
学芸大学東口商店街という名になぜか不思議な感じを抱きながら歩いてみると、これがまたにぎやかな下町の雰囲気。
この学芸大学駅、駅名の変遷がおもしろい。
開業は1927(昭和2)年。当時は碑文谷駅と名のった。ここに暮らす人たちのオアシス、碑文谷公園も駅から徒歩10分、東横線沿いにある。
このあと当時の東京横浜電鉄が、東京府青山師範学校を誘致、赤坂から移転させ、駅名も青山師範駅(1936年)に変える。
さらに学校が名前を変えるごとに、駅名も第一師範駅(1943年)、学芸大学駅(1952年)と変えた。
そんな東京学芸大学は、1964(昭和39)年に東京都小金井市に移転。たまに、受験生が間違えて中央線小金井駅ではなく、東横線学芸大学駅へ行ってしまうというエピソードもあった。
駅前居酒屋で、やさしい味に出会う
そんな学芸大学駅で仕事を終え、駅前を歩いてみつけたのが、「おでん」と記された赤ちょうちん。
寒い夕方、冷たい瓶ビールとおでんで一杯やるか……ということで、「やべ」の引き戸をがらがらがらと開けてみる。
「はい、いらっしゃい」とカウンターのなかに立つおばちゃんが2人。
「瓶ビールあります?」「それから、170円のこんにゃく、じゃがいも、ちくわ」
ひととおり、熱々のおでんが出てきて、全身で「はほはほはほ」して、冷たいビールをぐいっとやっていると……。
「きょうは鏡開きだから。おしるこ。どうぞ。しょっぱいものもいるでしょ。たくわんも」
酒飲みは甘いものが苦手というけど、このおでん屋のおしるこは、甘くなくちょうどよい加減。
初めてやる、ビールとおしるこ。これが意外にも、うまかった。ごちそうさま。やべさん。