新横浜駅で旅客が避難する様子(提供:JR東海)

JR東海は13日夜から14日にかけ、東海道新幹線の実車を用いた異常時対応訓練を行った。参加者数は同社社員や警察などあわせて150名。

東京駅15番線に入線するN700S車両。今回の訓練は、品川駅出発後に事件が発生するという想定で行われた

東海道新幹線では、大規模災害や不測の事態の発生に備え、本線において実際の新幹線車両を使用した実践的な大規模訓練を実施している。今回は2021年に小田急線や京王線の車内で発生した傷害事件を踏まえ、「品川駅~新横浜駅間走行中の車内で、不審者が刃物を用いて周囲に危害を加える異常事態が生じた」という想定で訓練を行い、2つの新しい運転取り扱いを初めて実施した。

刃物を持った不審者が暴れ始め、周りの乗客に危害を加える想定で訓練が行われた
乗客が車両から退避したのち、警察が踏み込む

1つ目は「非常ブザーが複数扱われた場合の取り扱い」だ。これまでは、走行中に非常ブザーが扱われると、運転士は原則として列車をその場で緊急停止させていた。

非常停止ボタン

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一方、昨年の車内傷害事件を踏まえ国交省が取りまとめた対策では、「複数の非常通報装置のボタンが押され、かつ内容が確認できない場合は緊急事態と認識し、安全を確保するため、防護無線の発報等により他の列車の停止を図るとともに、当該列車についても速やかに適切な箇所に停止させることを基本とする」とされた(※)。そこで、今回の訓練では適切な箇所を「新横浜駅」に設定し、ブザーが押された後も駅まで列車を走行させている。

※「京王線車内傷害事件等の発生を受けた対策をとりまとめました 」(2021年12月3日、国交省発表)

2つ目は「駅ホームにおける旅客の避難誘導の取り扱い」だ。適切な停止位置からずれて停止した場合、従来であれば、停止位置を修正した後に乗降扉およびホームドアを開扉していた。今回の訓練では、国土交通省の定めた対策を踏まえ、停止位置を修正せず速やかに乗降扉・ホームドアの双方を開扉し、避難誘導を行う取り扱いを実施した。

停車位置がずれていてもホームドア・乗降扉を開けて乗客を避難させる

訓練前は「部署間で正しい情報提供ができるかどうか」が懸念されていたとしつつも、グループ通話システムを活用した情報提供や受け入れ側の駅の対応についてもおおむね想定通りで、全体的なオペレーションが確認できたという。囲み取材に応じたJR東海 新幹線鉄道事業本部 近藤雅文運輸営業部長は「非常時においてこのような訓練を積み重ねるのは非常に大切なこと」「今後も社員の対応能力向上に努め、引き続き実践的な訓練に取り組む」とコメントした。

異常時対応訓練後、囲み取材に応じるJR東海 新幹線鉄道事業本部 近藤雅文運輸営業部長