ちょい乗りシートからドア開閉ボタンまで 各停の通勤電車で快適性追求 阪神「ジェット・シルバー5700」の実力をみる【コラム】
各停の通勤型電車ながら「ブルーリボン賞」受賞

阪神の新鋭車両、それが2015年にデビューした5700系電車です。各駅停車用通勤電車のジェット・シルバーは4両1編成で、本線と神戸高速線で運用します。
ジェットカーは、60年以上続く阪神各停電車の愛称名というかブランド。阪神は駅数が多く、各停がゆっくり走っていては、後からくる特急や急行に追いつかれてしまいます。
そこで、阪神は各停に高性能車両を投入してきた歴史を持ちます。初のジェットカーは1958年デビューの初代5001形電車でした。
鉄道ファンも、ジェット・シルバー5700の高性能を分かっています。通常は特急用車両や観光列車が受賞する鉄道友の会のブルーリボン賞を、2016年に受賞しました。
3種類のつり手を使い分けて握りやすさに配慮

車内設備のこだわりとして、つり手(つり革)が挙げられます。床面からの高さは1838ミリ、1618ミリ、1550ミリの3種類。ドア部は高く、車内に入ると通常の高さと、床面からの高さを下げたつり手を用意して、使い分けてもらえるよう工夫します。
さらに、つり手はドア部のマクラギ方向にも設置しています。最近の通勤車両は以前に比べつり革が増設され、混雑時もヨロけたりしなくなりました。
大型の袖仕切りで車内の圧迫感をなくす

ジェット・シルバー5700は、シートにも新機軸があります。乗車してすぐ目に留まるのが、ドア部と座席を仕切る袖仕切り。画像で一目瞭然ですが、従来の鉄道車両に比べると、かなり大型です。形状もドア側からみると真ん中が山型に盛り上がっていて、ラッシュ時に寄りかかれそうです。
説明によると、大型の袖仕切りと、垂直のスタンションポール(金属パイプの手すり)に仕切り機能を持たせ、仕切りそのものは小型化して、車内の圧迫感をなくしました。中央部の山型は、予想通り腰乗せでした。
とはいっても、写真と拙文でご理解いただくのは限界も。関西の皆さん、そして全国の皆さん、次回の関西紀行の際は、ぜひ大阪梅田から神戸三宮まで、ジェット・シルバー5700で移動してみてください。
立ち上がりやすい「ちょい乗りシート」
ジェット・シルバー5700は、シートそのものも工夫しました。ドア横2席は、名付けて「ちょい乗りシート」。先述のように阪神は駅間が短く、各停の場合、短区間乗車する利用客が一定数います。
そこで阪神がひねり出したのが、立ち座りしやすいシート。座面を通常のシートに比べて3センチほど上げ、前端部をわずかに傾斜させ、立ち座りしやすくしました。
乗客は、気付かないかもしれません。でも写真でみると、隣接する一般シートとの違いがよく分かります。