廃食油由来の燃料で路線バスが走る 西武バスが導入、日本初の要素も 西武グループのSDGsもご紹介【コラム】

2022.07.14

RDバスの外観。前面は通常の西武バスと同じカラーリング、側面と後部が特別塗装されます(筆者撮影)

現代の鉄道・交通業界にとって最も重い経営課題がSDGs(持続可能な開発目標)。西武グループは脱炭素社会を目指した新しい取り組みを始めます。西武バスは2022年7月14日から、使い終わった食用油などを再生した軽油代替燃料100%で走る路線バスを、埼玉県所沢エリアで運行します。

RD燃料(左)と一般的な軽油(右)の比較。RD燃料の方が透明度が高いように見えます(画像:西武バス)

国内バス業界初めてのチャレンジで、理論的には通常のディーゼル燃料(軽油)精製時に比べ、温室効果ガス排出量を90%も削減できます。総合商社系のエネルギー商社・伊藤忠エネクスが燃料を供給、西武バスは代替燃料で走ることを知らせる特別塗装車で、「地球環境にやさしいバス」をアピールします。

車両は従来の路線バスと同じ 燃料精製時の温室効果ガスを9割カット

西武バスと伊藤忠エネクスは2022年7月13日、埼玉県所沢市の所沢営業所で「リニューアブルディーゼル燃料(RD=再生ディーゼル燃料)で走る日本初のバス」の発表会を開催。終了後には、営業所から西武新宿線新所沢駅までの試乗会も実施しました。

鉄道、バス、航空機、船舶と、乗り物はどんなものでも、運行時のほか、燃料の製造時(発電時・精製時など)に温室効果ガス(GHG)を発生します。

西武バスの「RDバス」は、車両そのものは一般の路線バスと同じ。運行時の温室効果ガス排出量は変わりません。しかし、燃料に廃棄された食用油や動物油を再利用するので、精製時に発生するガスを、これまでのほぼ1割まで大幅カットできます。

給油方法は一般的な軽油と変わりません。電気バスなどと異なり、現在の燃料供給システムをそのまま引き継げる点もRDバスのメリットです(画像:西武バス)

フィンランドのメーカーが開発

RDの製造技術を開発したのは、フィンランドの専門メーカー・ネステ社。西武バスは伊藤忠エネクス、エネクスの親会社の伊藤忠商事と連携してRD採用を決めました。

伊藤忠エネクス環境ビジネス部リニューアル燃料課の相澤隆太課長によると、食用油をRD燃料に変換するには水素圧入などの工程が必要。プラントや廃食料油回収の関係で、現時点では国内製造が難しく、西武バスもRDの全量を輸入でまかないます。

このため、コストが通常の軽油に比べ3~4倍とふくらむのが課題。西武バスはRDバスは専用1台に限定し、運行期間も今後5年間を予定するなど、現時点ではRDバスは本格導入というより、試行的な意味合いが強いようです。

廃油以外で再生燃料に活用できる可能性があるのは、一般廃棄物(いわゆる生ごみ)や植物由来の木質バイオマス。伊藤忠エネクスは、こうした新しい燃料資源の可能性も追求します。

西武所沢駅起点の2路線を走る

西武バスのRDバスが走るのは、いずれも西武新宿、池袋線が連絡する所沢駅を起点に、東所沢駅―志木駅南口線と安松―東所沢駅線の2路線です。

RDバスはモスグリーンのボディーに、「THIS BUS RUNS ON NESTE MY Renewable Diesel(このバスはネステの再生燃料で走っています)」とプリントされているので、バスファンの皆さん、機会があればぜひ〝日本で1台だけのバス〟の乗車にチャレンジしてみてください。

RD燃料で走ることをアピールするボディー側面の特別塗装(筆者撮影)

西武バスは今回のRDバスのほか、ユーグレナのバイオディーゼル燃料で走る「サステオ」、量販型燃料電池バスの「SORA(ソラ)」など、新技術を活用したSDGsに力を入れます。西武バス管理部の渡邊浩平主任は、「今後も温暖化ガス削減につながる取り組みを進めていく」と話しました。

西武山口線は自社太陽光発電だけで運行

西武バスのRDバスをきっかけに、西武ホールディングス各社のSDGsをまとめました。西武グループはSDGsのほか、社会貢献や社会規範を守る企業活動を「サステナビリティアクション(ESG)」と総称します。鉄道やバスの交通系企業に加え、ホテル、レジャーといった各分野での取り組みを進めます。

西武鉄道のESGは、①省エネルギー車両への更新(40000系増備など)、②車両や駅施設照明のLED化、③西武多摩川線でのサイクルトレイン運行、④100%自社の太陽光発電を活用した山口線(レオライナー)運行――の4項目。

2021年に多摩川線で運行を始めた、自転車を持ち込めるサイクルトレインは、1カ月当たり1000件程度の利用があるそう。新交通システム(正式には案内軌条式鉄道〈AGT〉)の西武山口線は、2021年4月から自家発電電力だけで運行されます。

地方鉄道の伊豆箱根鉄道グループは、節水、エコ製品の使用、エコドライブ励行と、身近なところからESGに取り組みます。

プロ野球の西武ライオンズも、もちろん西武グループの一員。子どもたち向けの野球教室で地域振興に貢献するほか、ペットボトルリサイクルにもチームを挙げて取り組んでいます。

記事:上里夏生


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