ちょい乗りシートからドア開閉ボタンまで 各停の通勤電車で快適性追求 阪神「ジェット・シルバー5700」の実力をみる【コラム】

2022.07.09

すべての車両に車いすとベビーカーのスペース

すべての人が利用しやすい、車両のユニバーサルデザイン(UD)にも創意工夫があります。ジェット・シルバー5700は、すべての車両に車いすやベビーカー対応のスペースを用意しています。

ドアレールは、これも最近の鉄道車両の定番ですが、車いすやベビーカーがレールに引っ掛からないように、切り欠きを設けています。ドア上部には、扉に挟まれるトラブルを防止するためのドア開閉予告ブザー、ブザーと同時に点滅するLED式予告灯、視覚障がい者のために、チャイム音が鳴る誘導鈴を設置しました。

ドア上の車内案内表示器は32インチハーフサイズで、停車駅、乗換案内、駅設備、開扉方向などを分かりやすく表示します。画面を左右に分けて、右側に運行案内、左側に静止画や動画を表示するといった分割表示も可能です。

大都市の各停通勤車両では珍しいドア開閉ボタン

各停時の運用で特に実力を発揮する「ドア開閉ボタン」(写真:阪神電気鉄道)

ジェット・シルバー5700は、環境性能も追求します。モーターは電力回生ブレーキ付きのVVVFインバータ制御を採用。低騒音化を実現するとともに、回生ブレーキ領域の拡大で、消費電力は従来車両比で50%程度に抑えた省エネ車です。

車内設備で目を引くのがドア開閉ボタン。従来は寒冷地仕様車両に必携でしたが、最近は阪神のような一般都市鉄道での採用事例が増えています。阪神は「各停の場合、特急や急行の通過待ちで一定時間、駅に停車することがあるので、お客さまがドア開閉して、車内を保冷・保温するため」と説明します。

リニューアル車やワンマン改造車にもドア開閉ボタン

阪神はジェット・シルバー5700を今後の標準車両とする考えです。1995年から投入した5500系電車のリニューアル工事や、同形式の武庫川線対応のワンマン改造でも、ドア開閉ボタンや座席中央部へのスタンションポールなど、5700系に準じた設備を採用しました。

このうち武庫川線用5500系は、ワンマン運転に対応するため自動放送装置を設置しました。武庫川線は路線は短いものの、列車は2両編成で短いことから、客室の一部をシートをなくしてフリースペース化し、輸送力増強にもつなげています。

遊び心が感じられるのが、武庫川線用5500系の塗装。黄色に黒色のしま模様は、多くの方が想像される通り「タイガース号」。車内では、一部の座席に座るとトラ耳をつけているように見える「TORACO SPOT」を設置して、〝映える〟(すでに流行遅れの表現かも)シャッターチャンスを演出した、その名も「TORACO号」です。

阪神といえば野球という方も多いでしょう。今シーズンの阪神タイガース、開幕当初は連敗続きでしたが、セパ交流戦を契機に盛り返してきました。阪神電車も粘り腰をみせるタイガースのように、常にフレッシュな活力あふれる鉄道であってほしいと思いながら、本コラムを終えます。

ジェット・シルバー5700外観(御影駅)。スマートさや精かんさを感じさせます(写真:阪神電気鉄道)

記事:上里夏生


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