江ノ島電鉄800形とは

江ノ島電鉄800形は、1971(昭和46)年から1986(昭和61)年まで活躍した車両です。江ノ電に渡ってくる前は、山梨交通、上田丸子電鉄(現:上田電鉄)で活躍した、江ノ電にしては珍しい山岳地域出身の車両でした。連接構造の車両に比べて車体が大きく(それでも一般的な車両に比べれば短い)、ボギー台車の車両を2両連結して編成を組んでいた、いわゆる「連結車」です。

江ノ島電鉄800形

800形は山育ちゆえ、早くからヒーターを装備しており、江ノ電初の暖房車として乗務員からありがたがられました。入線後しばらくしてドアの増設も行われましたが、連結車であるがゆえに4両編成(連接車2編成の連結)に対応できず、1986年に引退しました。引退前の800形は、クリーム色と茶色のツートンカラーの「チョコ電」として運行していたため、そちらのカラーリングの方を覚えている人も多いのではないでしょうか。

ちなみに、800形の引退と時を同じくして、江ノ電初の平行カルダン駆動を搭載した1500形が登場しています。当初は「サンライン号」という愛称と専用のカラーリングをしていました。また、引退後の800形のうち、801号は、生まれ故郷である山梨県南巨摩郡富士川町の公園にて静態保存されています。

江ノ電初の鉄道コレクション発売の狙いとは

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江ノ電エリアサービスはなぜ、「鉄道コレクション」シリーズ開始18年目にして初めて、自社オリジナルの「鉄道コレクション」発売に踏み切ったのでしょうか。同社営業部課長代理の飯田敦史さんにお話をうかがいました。

飯田さんとトミーテックの担当者とのつながりは、10年ほど前の江ノ電バスの「バスコレクション」発売から。その頃から鉄コレの構想はあったものの、なかなかタイミングが合わず、実際に企画が動き出したのは2019年の「ヨコハマ鉄道模型フェスタ」からでした。

総合車両製作所が発売した「鉄道コレクション 東京急行電鉄7000系(2代目)」 に飯田さんが触発され、トミーテックの担当者に相談し、企画が具体化しました。元々は実車の現役時代を知っている世代向けに800形を企画していたようですが、いざ発表してみると、SNSでは世代に関係なく、多くのユーザーからの反響が見られました。

「鉄道コレクション」江ノ島電鉄800形、車両とパッケージ

江ノ電初の「鉄道コレクション」に800形を選んだ理由について、飯田さんは次のように語ります。

「MODEMOさんで出されている商品でいうと、(江ノ電の車両は)もうほぼ揃っているんですよね。唯一無いのが800形でした。それと、鉄コレですと連接車の動力化がネックになるというところで、800形のほうが今の動力にも合うのかなと。それになんといっても、800形は私自身が江ノ電の車両の中でも大好きな車両の一つでした(笑)」

江ノ電を多数模型化したMODEMOも、800形(右の車両)は製品化していなかった

ちなみに、対応する動力ユニットが存在しない「鉄道コレクション」の例としては、京阪電車80形(事業者限定版発売時)、能勢電鉄50形・60形、下津井電鉄が挙げられます。京阪電車80形に関しては、後にトミーテックからも一般販売で発売し、専用の動力ユニット(TM-TR05・大型路面電車用B)も同時に発売されました。