「チョコ電」再現を意識、実物との照合が大変

飯田さんによれば、模型化そのものにはあまり苦労されなかったそうです。トミーテック側で最初の設計図ができた時点で完成度は高く、実車の図面が残っていないにもかかわらず、飯田さんが気付かなかったような細かいところも再現されていたと言います。問題はむしろ、実車の資料の少なさにありました。

「この車両(800形)は江ノ電に15年しかいなかったんですね。その中でも形態がしょっちゅう変わってたんですよ」(飯田さん)

江ノ島電鉄(当時の社名は江ノ島鎌倉観光)でデビューした当初の800形は、前照灯が上部に取り付けられており、中央の乗降ドアが無く、車端部に元々ある乗降ドアは木製。さらに、801号のパンタグラフの位置も異なっていました。今回「鉄道コレクション」で模型化された800形は、前照灯が下部に移設され、乗降ドアが3ドアで鋼製になり、801号のパンタグラフ位置が変更された形態です。

模型化されたのは、前照灯が下部に移設された仕様
801号はパンタグラフ位置が変更されている
802号

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これは、800形が「チョコ電」として引退まで運行した時の仕様、つまり最終形態です。飯田さんによれば、今回の「鉄道コレクション」江ノ島電鉄800形は、江ノ電の標準カラーよりも「チョコ電」カラーを作りたかったとのことで、「チョコ電」カラーで運行していた形態の再現が行われました。

「チョコ電」カラーの800形も同時発売予定
800形「チョコ電」カラー
「チョコ電」カラーの801号
「チョコ電」カラーの802号

しかし、「チョコ電」としての形態を意識した一方、それと同じ形態で江ノ電標準カラーをまとっていた時期は、実は2カ月半という非常に短い間のみ。その後は「青電」カラー、そして「チョコ電」カラーと塗装変更されたため資料も少なく、模型化した形態での江ノ電標準カラーが本当に実在したか調べるのに苦労されたそうです。最終的に、詳細な乗車記録を残していた沿線ファンの協力と、市販のビデオに偶然映っていた800形の映像から、この形態が確かに存在していたことが確認できたといいます。

「本当は台車や床下機器も実車に近づけたかったのですが、これに対応すると売価に反映されてしまいます。販売のことを考えるといたずらに価格を上げることはしたくなかったので、そこは既存のものを流用しました」(飯田さん)

江ノ電カラーのパッケージ写真は、イメージとして掲載。それくらい資料が少ない
「チョコ電」カラーのパッケージ

むしろ最大の苦労は社内調整にあったと飯田さんは言います。「これを作るにあたってこれまでのグッズを作るのとは桁が違うくらいの額がかかるんですよ。そこをどうやって社内に認めさせ、商品化するかというのが苦労しましたね」(飯田さん)と振り返ります。そこで、「鉄道コレクション」の概要や、採算性、他社での販売状況などを調査し可能な限り資料にまとめ、取締役会でプレゼンしてOKをもらったとのことでした。