大阪市の「市営モンロー主義」

ここから、うめきた駅が起点になる鉄道新線・なにわ筋線をご案内します。

なにわ筋線の話に入る前に、触れておきたいキーワードが「市営モンロー主義」、さらには大阪の都市構造です。鉄道がネットワークを拡大した20世紀初頭、大阪市が打ち出したのが「市内の鉄道は大阪市がすべて建設、管理・運営する」の指針。これが市営モンロー主義です。

大阪市の都市構造はキタの梅田(JRは大阪駅)、ミナミの難波(心斎橋や天王寺も)の南北二極構造ですが、双方を結ぶのは地下鉄御堂筋、四ツ橋、堺筋、谷町の地下鉄4線。市営地下鉄の交通独占は、市外から市内への移動で、必ず途中駅での乗り換えが必要になるなど課題もありました。

「2005年までに整備するのが適当な路線」

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そうした状況の打開を目指して構想されたのがなにわ筋線。大阪市中心部を南北に貫く、なにわ筋の地下に建設される鉄道新線で、大阪圏の鉄道整備方針を示す1989年の運輸政策審議会答申に「2005年までに整備することが適当な路線」として登場しました。

なにわ筋線は1999~2000年度、2009~2011年度の2回にわたる国土交通省の調査などを経て、2017年に大阪府、大阪市、JR西日本、南海電気鉄道、阪急電鉄の5者(社)が共同で、早期事業化を目指すことを確認。2021年10月に工事に本格着手というのが、これまでの流れです。

なにわ筋線の整備(建設)区間は図の通りで、うめきた駅―西本町間(JR・南海共同営業区間)、西本町―JR難波(JR営業区間)、西本町―新今宮(南海営業区間)に3分割。建設延長は7.2キロ(地下6.5キロ、堀割・盛り土0.3キロ、高架0.4キロ)、「Y」の字を逆さまにしたような線形です。

なにわ筋線の路線図。大阪駅とうめきた駅は結節して描かれます。駅名は一部仮称です(資料:JR西日本)

なにわ筋線はうめきた駅で梅田貨物線、JR難波で大和路線(天王寺でJR阪和線に接続)、新今宮で南海本線にそれぞれ接続。大阪駅と関西国際空港が直行ルートで結ばれます。

大阪市の試算では、総事業費3300億円、利用見込み1日24万人。途中駅はうめきた駅方から中之島、西本町(いずれもJR、南海共同営業区間)、新難波(南海営業区間)の3駅(駅名はいずれも仮称です)を設けます。費用便益比(B/C)は開業30年で1.40、開業50年で1.59で、いわゆる元が取れる計算です。

整備方式は、第三セクターの関西高速鉄道が第三種鉄道事業者として施設を整備。JR西日本と南海が第二種鉄道事業者として乗り入れます。