京急28年ぶりの運賃改定で何が起こるのか 「遠距離値下げ」で需要創出・沿線活性化狙う
神奈川県横浜市に本社を置く京急電鉄は13日、2023年10月の運賃改定実施に向け、国土交通大臣宛に鉄道旅客運賃の変更認可申請を行ったと発表しました。
同社としては1995年以来28年ぶりの運賃改定となります。改定率は10.8%で、初乗り運賃は10円(IC運賃は14円)値上げの150円に。ただし、遠距離ほど改定率を低く抑え、41キロ以上の区間では逆に現行運賃より下げます。また通学定期旅客運賃は据え置きとし、空港線加算運賃や座席指定料金は変更しない方針です。
具体的には品川~羽田空港第1・第2ターミナルまでは現行の300円から330円に、品川~横浜までは310円から320円に値上げされる見込みです(※本来の申請上限運賃は350円ですが、運賃認可後に320円で届け出予定)。近距離利用では割高感が出てきますが、品川~金沢文庫間(39.5キロ)などは現行運賃の500円から10円しか値上がりしません。
41キロ以上の利用例を見てみましょう。品川~三崎口間は通しで乗ると950円ですが、改定後は740円となり、なんと210円の値下げに。現行運賃でも途中駅で乗車券を分割することで安く移動することはできますが、それと比較しても改定後の方が安い、という結果になりました。
改定率10.8%に対する増収率10.1%という数字を見るに、遠距離を大胆に値下げしても全体の収益への影響は軽微だと考えられます。ボリュームゾーンでしっかり収益を確保し、遠距離利用にインセンティブを与えることで三浦半島への移住や観光を促進し、需要創出や沿線活性化を図ります。
京急線沿線から都心への移動でもちょっとした変化が起こりそうです。京急久里浜ですら横浜と34.6キロしか離れていないため、運賃改定後は横浜で東急線やJR線に乗り換えるのではなく、京急線で品川まで移動してから乗り換える方が安上がりになるケースも出てくるでしょう。もちろん全ての利用者が値段を重視するわけではありませんが、運賃改定後は乗換駅として品川を選択する人が増えそうです。
(写真:waffle / PIXTA)