全国最多17件の国指定重要無形文化財を抱えながらも、地元の伝統芸能の担い手不足などの課題を抱えている秋田県に、音楽のチカラで人を惹きつけたい―――。

そんな想いであきた芸術劇場ミルハスで3月9日に開催されたのが、「わっかフェス」。会場は2000人のオーディエンスが熱狂し、オンラインで5000人が応援した。

この「わっかフェス」がユニークなのは、秋田竿燈まつりや、西馬音内盆踊り、根子番楽といった秋田の伝統芸能に、野外ロックフェスなどで熱演を重ねる東京スカパラダイスオーケストラや、秋田県出身 高橋優が出演し、秋田版ミクスチャーで盛り上がったという点。

地域住民をはじめ、県外からのファンなど、多様な志向の音楽好きが集まり、地元秋田を盛り上げた。

群馬県出身者が秋田竿燈まつりで魅せる

まずは秋田県の郷土芸能 4 団体(秋田竿燈まつり、Akita 和太鼓パフォーマンスユニット音打屋-OTODAYA-(なまはげ太鼓)、西馬音内盆踊り、根子番楽)によるパフォーマンス。

郷土芸能のトップバッターは、「秋田竿燈まつり」。オーディエンスの手拍子にチカラを得た演者たちは、約8m の竿燈を頭や肩にのせる華麗な技を魅せつけた。

この竿燈の差し手は、実は群馬県出身。秋田県の「竿燈祭り」を観たとき、その姿に憧れ、差し手を志し、「こうして披露できることがとてもうれしい」と。

県境や国境を越えて人を引き寄せる、感激のワンシーンがここに

続いて、「立教大学 合唱団アヒル会」も参加した西馬音内盆踊り。独特な歌詞と音色に合わせた舞いに拍手がわく。

立教大学 合唱団アヒル会の参加者たちは、「めっちゃ難しい踊りだったけど、指導してもらい覚えることができた。静から動のメリハリある動きを表現するのが難しかった」と。

まさに、伝統芸能や祭り、音楽が、県境や国境を越えて人を引き寄せる、感激のワンシーンがここに―――。

伝統芸能を通して次世代につなげ、関係人口拡大や地域創生、次世代支援へ

根子番楽は、「秋田竿燈まつり」西馬音内盆踊りよりは落ち着いた雰囲気を持ちながらも、武士同士が切り合うシーンでは火花が散るなど、手に汗握る場面も。

根子番楽の演者たちは、「毎年、お盆の時期に行われているので、秋田県のみならず、全国の人に見てほしい」という。

郷土芸能のラストを飾るのは、「Akita 和太鼓パフォーマンスユニット音打屋-OTODAYA-(なまはげ太鼓)」。

なまはげの姿で頭を振りながら、太鼓をたたく姿は、圧巻。なまはげ太鼓を打つ演者はこう伝える。

「秋田の象徴ともいえる“なまはげ”をなまはげ太鼓という伝統芸能を通して次世代につなげられる活動をしている。秋田の芸能を、ここ秋田から広めていきたい」

秋田県でパフォーマンスできるよろこび、爆発!

そしてステージには、秋田県出身アーティスト高橋優も駆けつけ、熱狂もピークへ。

東京スカパラダイスオーケストラは冒頭から「トーキョースカ」の世界へ。

「秋田に来ると、日本人でよかったって感じる、秋田の文化を大事にしているのが伝わる」

会場はスタンディングオベーション。大きな拍手が送られ、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーもそれに応え、圧倒的バンドプレッシャーで会場を席巻。

そんなスカパラの渦中に高橋優が入り込み、ガソリン注入。

「秋田が好き。人が暖かくて、集まっている人たちが明るい」と秋田県でパフォーマンスできるよろこびを伝えると、「太陽と心臓feat.高橋優」へ。

「あきた芸術劇場ミルハス(本会場)がとても気に入ったから、今年の全国ツアーもこの場所で行いたい」(スカパラ)

ステージと客席が一体となり会場はブーストマックス

最後は、東京スカパラダイスオーケストラと高橋優、前出の郷土芸能4団体・立教大学アヒルの会が、「Paradise Has No Border feat.秋田文化芸能」を披露。

会場のボルテージは最高潮に達し、ステージと客席が一体となり会場はブーストマックス。

秋田県の多彩な伝統芸能、ノーボーダーをテーマとする東京スカパラダイスオーケストラ、秋田県出身の高橋優、オーディエンス、オンライン視聴者、その全員がひとつの「わ」となり、秋田県の伝統芸能の魅力発信につながるステージへ―――。

故郷への想いや、人と人の絆を未来へつなぎたい

「わっかフェス」は、2014年から2022年まで開催した、歌のチカラで被災地の復興への歩みを後押しする「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」の後継として、これまで培ってきた故郷への想いや、人と人の絆を未来へつなげるべくスタート。

初開催地となった秋田県では、後継者不足が深刻な郷土芸能のパフォーマンス、秋田県出身のアーティストなどを招待し、想像以上の盛り上がりに―――。

世代間のつながりで伝統芸能の魅力を発信、地域に人を呼び込むきっかけに

この「わっかフェス」を主催する三菱商事、朝日新聞社、秋田朝日放送は、こう伝えている。

「秋田県は民俗芸能の宝庫であり、伝統芸能を含めた文化・芸術を拡大することが県の戦略のひとつとなっていることから、「わっかフェス」第一回目の開催地として相応しいと考えている。

「わっかフェス」は、世代間のつながりにより、伝統芸能の魅力を発信し、地域に人を呼び込むきっかけとなるイベントをめざしている。

伝統芸能の魅力・音楽の持つ発信力・未来を創る若い世代がコラボレーションをできることをうれしく思い、秋田県の地域向上につながればと考えている」