黒船来航の1853(嘉永6)年に開園し、ことし8月に170周年を迎える日本最古の遊園地「浅草花やしき」で20日、新エリアがオープンしました。

今回リニューアルオープンする新エリア

新エリアではリニューアルされた「お化け屋敷~江戸の肝試し~」など3つのアトラクションが用意されたほか、NAKED, INC.との初コラボによるお花の体感型アート展「NAKED花景色」、飲食店舗「お花見茶屋」が登場。

新しい技術を活用したアトラクションは斬新である一方、往年の「浅草花やしき」ファンの方にとっても嬉しい要素が盛り込まれていました。記者は2023年7月19日、オープン前の報道公開で新エリアを取材。今夏の家族旅行・鉄道旅行におススメのスポットとして見どころをご紹介します。

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※当記事で紹介する内容は全て2023年7月19日取材時のものです。

アトラクション①「お化け屋敷~江戸の肝試し~」

今回のリニューアルでは、従来のお化け屋敷を一新。

かつてはオリジナルのストーリーで演出されていたというお化け屋敷ですが、新たに江戸四大怪談(「累ケ淵」「牡丹灯篭」「番町皿屋敷」「四谷怪談」)をモチーフとしたものに生まれ変わりました。

怪しい入り口をくぐり暗闇の中を歩いて進むと、ガラスの向こう側に江戸四大怪談モチーフのおどろおどろしい仕掛けが浮かび上がります。中間地点付近の「掛け軸」を超えたあたりからは闇がいっそう濃くなったように感じられ、大人でも肝が冷えました。

江戸時代の怪談をモチーフとしたウォークスルー型のお化け屋敷

とはいえ全体的にはかなりマイルドな仕上がりにされたそうで、急にびっくりさせるような仕掛けは抑え気味。テーマもスタンダードなものなので、お子様の「初めてのお化け屋敷」体験にぴったり……という感じでしょうか。なお、4歳までのお子様は中学生以上の付き添いが必要になります。

アトラクション②「パノラマ時間旅行」

アトラクション入り口。部屋は3つありますが上映内容は同じ。左側のギャラリーには「浅草花やしき」のかつての姿を捉えた写真が並んでいます

「浅草花やしき」のシンボルとして親しまれ、2016年に惜しまれながら引退した「Beeタワー」。空から浅草の町を一望することができる人気のアトラクションでした。

「パノラマ時間旅行」は、そんな「Beeタワー」に実際に乗っているような、空中遊覧を体験できる映像型アトラクションです。部屋の四面にマルチ映像を投影することで、自分の身体が動いていないにもかかわらず、実際に空中を飛んでいるような不思議な感覚が体験できます。

壁面に映像を投影することで、椅子に座ったままスピード感あふれる空の旅が楽しめます

とはいえ、「Beeタワー」をそのまま現代の映像技術で再現したわけではない……というのが本アトラクションの面白いところ。空中散歩の途中でちょっとした捻りをくわえ、「パノラマ時間旅行」というアトラクション名にふさわしい映像を展開します。

ジェットコースターのようなスピード感もあり、記者個人としては今回一押しのアトラクションと感じました。

アトラクション③「摩訶不思議!?君もスクープカメラマン」

3つ目はARを活用した園内周遊型のアトラクションです。

新エリア内の「マルハナ新聞社」へ行くと、「園内に妖怪が出没しているらしい」「妖怪をカメラに収めてスクープしてくれ!」という説明を受けます。どうやら参加者は新聞記者となり、園内各地に潜む妖怪たちを探し回りスクープ記事を書くという使命を帯びている……という設定のようです。

制限時間は約15分。スタート時に手渡された専用デバイスを駆使し、園内の妖怪出現スポットを巡ってはカメラに収めていき、撮影が終了したらデバイスを返却します。するとスタート時に撮影された参加者自身の写真と撮影に成功した妖怪たちの写真をはめ込んだ電子新聞ができているという仕組みです。

あやしい看板にカメラを向けてみると……?どんな妖怪が出てくるのでしょうか?

妖怪スポットは全部で12か所。中にはちょっとした隠し要素もあるようで、一流の新聞記者になるのはなかなか難しいかも。なお、記者は12か所中7か所までしか発見できませんでした。「花やしき」識者の皆さんなら全ての妖怪を見つけ出す一流記者になれるでしょうか……?

四季折々の風景が楽しめる「NAKED花景色」

「浅草花やしき」が江戸時代に開園したことはすでに述べた通りですが、当初は牡丹と菊細工を主とした花園(かえん)として始まりました。現在でもお花に関する専門のチームがおり、園内の花は常に綺麗な状態が保たれています。

そんな「浅草花やしき」に新たに登場したのが、こちらの「NAKED花景色」です。

プロジェクションマッピングによって四季折々のデジタルアートが楽しめる空間に

「浅草花やしき」側からNAKED, INC.に空間プロデュースを依頼し、プロジェクションマッピングによって彩られた四季折々の風景を楽しめる空間に。

ある意味では現代のテクノロジーを活用した「浅草花やしき」への原点回帰とも言える空間で、癒しのミュージックとゆっくり移り変わる映像美を見ながら休憩するのに最適です。また展示付近には「花みくじ」も用意されています。

飲食店舗「お花見茶屋」

そんな「NAKED花景色」の反対側に設けられたのが、浅草の粋な風情と贅沢で華やかな彩りと味を堪能できる飲食店「お花見茶屋」です。

名物「パンダカー焼き」が8年ぶりに復活するということで大変注目を浴びていますが、見た目も可愛い「花むすび」や「デセールもなか」も美味しく仕上がっています。

「パンダカー焼き」だけでなく、「花むすび」や「デセールもなか」も絶品です(筆者撮影)

食事は手を汚さずに食べられるよう包まれており、休憩中に小腹を満たすのに最適。「浅草花やしき」には着物姿で来園する若い女性も多く、「手を汚さず食べられる飲食」を重要視されたということです。

このような包装で提供されるため、手を汚さずに食べらるのが嬉しいですね

なお、「花むすび」は結構な量がありますので、小食な人なら2つ3つで十分昼食代わりになりそうです。

移動も楽しい「ご利益横丁」&「時空階段」

新エリアのメインストリートや階段にもちょっと唸るような装飾がなされています。

2階のメインストリートは「ご利益横丁」。天井には提灯を、通りの左右には商店が建ち並ぶようなデザインとしてレトロ感を醸し出しています。

階段もレトロな雰囲気の「時空階段」に。「浅草花やしき」の過去の風景写真が壁にかけられており、170年の歴史を感じさせてくれます。

鉄道アクセスに恵まれた地、意外と神奈川からも近い?

2023年7月15日にデビューした東武新型特急「スペーシア X」は東武鉄道の浅草駅と日光・鬼怒川温泉を結びます

「浅草花やしき」によりますと、来園者のうち4割ほどは都内の方で、ご近所にお住まいの方がふらっと訪れてアトラクションに1・2回乗って切り上げるという楽しみ方も多いようです。

しかし浅草というまちは鉄道によるアクセスが抜群によく、「浅草花やしき」は遠方から非常に鉄道で訪れやすい遊園地でもある、ということにも目を向けるべきでしょう。

浅草にはつい先日「スペーシア X」がデビューしたばかりの東武線、日本最古の地下鉄である銀座線、京急線や京成線とも接続する都営浅草線、さらにはつくばエクスプレスと鉄道だけでも多方面からアクセス可能。

その気になれば栃木県の日光エリア、神奈川県の久里浜や三崎口、横須賀、千葉県の成田国際空港、茨城県の研究学園都市つくばなど、時間こそかかりますが遠いエリアから「乗り換えなし」で来れる利便性は相当なものです。さすがに駅から「浅草花やしき」までは徒歩で3~5分ほど離れていますが、浅草の町がそもそも魅力的な観光地ですから、駅を出た瞬間から入口までも一つのアトラクションのように楽しめてしまいます。

関東近郊からの鉄道アクセスが充実しており、0歳からでも乗れるアトラクションが豊富なことから遊園地デビューにも最適。まさに「鉄道で行きたい家族旅行にオススメのスポット」です。この夏は「浅草花やしき」でレトロかつちょっとカオスな雰囲気を思いっきり堪能してみるのもいいでしょう。

記事:一橋正浩 画像提供:浅草花やしき(※一部記者撮影)

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