パネルディスカッション登壇者全員によるフォトセッション。右端が丹羽JR東海社長(写真:鉄道チャンネル編集部)

リニア中央新幹線には神奈川、山梨、長野、岐阜の中間4県駅が設けられる。4県の知事が一堂に会し、JR東海の丹羽俊介社長も交えてリニア駅を核にした国土形成の方向性を話し合うシンポジウムが、2023年11月6日に東京・大手町の日経ホールで開かれた。丹羽社長はリニア駅からの地域振興に力を入れる考えを示し、「地域の皆さんには大いに提言してほしい(大意)」と呼び掛けた。

シンポのタイトルは「リニア中間4駅による広域中核地方圏の創造と国土構造の改編」、サブタイトルは「日本をエンパワーメントする」。〝失われた30年〟で国際競争力を低下させた日本が、リニア開業を機に活力を取り戻す(エンパワーメント)ことを狙いに企画された。

実質的な主催者は、東京に本部を置く計量計画研究所。公共交通や国土づくりの調査研究を手掛け、鉄道分野では「TOD(公共交通指向型開発)」の研究で知られる。

リニア新幹線に関しては2022年3月から、有識者と国、関係自治体、JR東海などをメンバーに検討委員会(委員長・森地茂政策研究大学院大学名誉教授・特任教授)を置いて、中間4駅からの地域づくりを検討。2023年7月に報告書をまとめた。

シンポは検討の成果を発信する目的で、4県知事が地域づくりの考え方を発表。「ロボット産業・AI(人工知能)企業の集積」(黒岩祐治神奈川県知事)、「水素・燃料電池関連産業の誘致」(長崎幸太郎山梨県知事)、「航空・宇宙産業の育成」(阿部守一長野県知事)、「バーチャルとリアルを融合する街づくり」(古田肇岐阜県知事)などを披露した。

この中で古田知事は、中津川市に設けられる新駅の県レベルでの整備方針を公表。リニア駅は総延長1.3キロにおよぶ高架区間につくられ、ホーム長390メートル。自然豊かな周囲に溶け込むデザインとし、在来線や道路交通との結節性にも配慮する。JR東海にも、県の考え方を提示済みという。

古田岐阜県知事がシンポで公表した岐阜県駅のイメージ。在来線とはJR中央線美乃坂本駅で連絡する(写真:鉄道チャンネル編集部)

リニアは静岡工区が本格的な工事に入れず、予定された2027年開業に黄信号がともる。この点について、阿部知事は開業時期を早急に明示するよう要請。黒岩知事も、国家プロジェクトとして国の総力による建設促進を求めた。

ディスカッション後半では、丹羽JR東海社長が全体としては工事が着実に進むことや、地域密着の姿勢を強調。しかし、4知事は岸田文夫総理との面談が急きょ決まって退席したため、直接意見を交わす場面はなかった。

丹羽社長は4県進むリニア建設工事を写真で示した(写真:鉄道チャンネル編集部)

記事:上里夏生

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