「より明るい今日とより良い明日に向けて、健全な社会と地域社会、そして国民のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献した方々を称える目的で、公益社団法人日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループによって2004年に創設」

それが、ヘルシー・ソサエティ賞(THE HEALTHY SOCIETY AWARDS)。

―――日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ(ジョンソン・エンド・ジョンソン/ヤンセンファーマ/エイエムオー・ジャパン)は、第19回 ヘルシー・ソサエティ賞の授賞式を都内で開催し、受賞者6名を発表した。

医師会や厚生労働省など6省庁が後援するヘルシー・ソサエティ賞

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日本医師会、日本病院会、全日本病院協会、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省が後援し、日本看護協会と、日本で50年以上にわたり事業を展開してきたグローバルヘルスケア企業 ジョンソン・エンド・ジョンソンが共催するヘルシー・ソサエティ賞は、創設から19回目を迎え社会で広く認識され、評価される賞に発展。

第19回ヘルシー・ソサエティ賞は、創設当初のフィロソフィーのもと、「健全な社会は、誰かの努力によってつくられる」をテーマに、「教育部門」「医師部門」「医療・看護・介護従事者部門」「パイオニア・チャレンジ部門」の4部門から各1名、「ボランティア部門」から2名が選ばれ、計5部門・6名が受賞した。

受賞者は、医療、看護、教育、ボランティア、介護、研究といったさまざまな分野で、自らの努力とリーダーシップで周囲の組織や地域、そして市民を巻き込みながら、より健やかな社会に向けて大きく貢献してきた。

この受賞を機に、こうした尊い活動の数々が社会により広く認知されることで、国民の健康や地域社会の福祉、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上につながることが期待されている。

日本看護協会 高橋弘枝会長「尽力に深い敬意を」

「第19回ヘルシー・ソサエティ賞6名の受賞者の皆様、この度は誠におめでとうございます。

それぞれのお立場において人々の生活の質(QOL)の向上に貢献してこられた受賞者の皆様に、約76万の日本看護協会会員を代表致しまして、心よりお祝い申し上げます。

また皆様が日頃より従事しておられる素晴らしいご活動、それぞれの地域でより健やかな社会を築こうとするそのご尽力に深い敬意を表します。

ヘルシー・ソサエティ賞は、創設以来多くの関係者の方々に支えられ、今回19回目を迎えることができました。長年にわたる皆様からのご支援に感謝申し上げます。あらためまして、この度はおめでとうございます」(日本看護協会 高橋弘枝会長)

ジョンソン・エンド・ジョンソン玉井孝直代表「これからも、複雑な病を予防・治療・治癒することのできる世界のために」

「『第19回ヘルシー・ ソサエティ賞』受賞者の皆様に心よりお祝いを申し上げます。

また、この賞を創設時よりともに育んでくださいました日本看護協会様をはじめ、ご後援をいただいている各省庁、団体、ならびに支援者の皆様に深く感謝申し上げます。

医療、看護、介護、教育等における喫緊の課題にご尽力されている方々の素晴らしい功績を顕彰するこの機会を大変光栄に存じております。

これからも、複雑な病を予防・治療・治癒することのできる世界のために、そしてすべての人がより健康である未来のために、私どもも取り組み続けてまいります。

受賞者の皆様、この度はあらためておめでとうございます。今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます」(ジョンソン・エンド・ジョンソン玉井孝直 代表取締役社長 メディカル カンパニー プレジデント)

―――そう称賛される第19回「ヘルシー・ソサエティ賞」受賞者6人(敬称略)の活動・実績を紹介しよう。

【教育部門】萱間真美 国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国立看護大学校 大学校長

https://www.ncn.ac.jp/college/020/02_president.html

受賞理由:同氏は、精神看護学での教育活動に加えて、災害支援および精神科訪問看護制度充実のための人材育成に貢献した。

東日本大震災では、聖路加国際大学大学院精神看護学研究室の教育・大学院生にPFA(サイコロジカルファーストエイド)を基盤とした事前教育を行い、精神科病床機能を失っていた福島県相馬地区において、ボランティア受け入れとその調整に当たる支援者をサポートする人材派遣を行うなど、同地の精神科地域医療に貢献した。

新型コロナウイルス感染症の流行下では日本看護協会が開始した看護師へのメンタルヘルス事業において聖路加国際大学大学院精神看護学研究室の教員や大学院生によるメール相談室を立ち上げた傍ら、日本精神保健看護学会社会貢献委員会とともにPFAに基づくリモート支援のためのガイドラインを開発し、看護系学会、看護系大学、精神保健福祉士協会、および厚生労働省研究班で活用された。

精神障がい者の地域包括ケア推進にも尽力。訪問介護ステーションが行う精神科訪問看護の充実と発展に向けた人材育成に注力する傍ら、「精神看護基本療養費」の制度整備のために必要なデータ研究を東京大学および聖路加国際大学とともに実施し、同制度化に大きく貢献した。

【ボランティア部門(国際)】井津建郎 特定非営利活動法人 フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー JAPAN 創設者・理事

https://fwab.jp/about/steps/

受賞理由:同氏は、カンボジアとラオスに非営利小児病院を設立し、現地の小児医療を支え、また医療人材の育成に大きく貢献した。

世界的な宝飾ブランドをはじめ、多くのブランド・企業のコマーシャルフォトを手掛けながら、「聖地」や「祈り」などの名作でも知られる著名な写真家である。

同氏は、約30年前に写真家として世界各地をめぐる中で、カンボジアの少女がたった2ドルの治療費が払えなかったことから必要な医療を受けられず、同氏の目の前で亡くなってしまったことをきっかけに、無料で医療が受けられる非営利の小児病院を作ることを決意した。

決意するや否や同氏は写真家としての作品によって得た資金で基金を設置し、1995年には「フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー(国境なき友人)」をニューヨークに設立。翌年に日本事務所を開設し、以降多くの支援をもとに1999年にカンボジアに「アンコール小児病院」を開設した。

同病院は医療を提供するだけでなく、現地運営もできるよう現地の人材育成にも努め、現在では現地化も図った。

以来、約500名のカンボジア人スタッフが、述べ200万人以上の子どもたちの健康を守りながら、さらにカンボジア全土の医療教育と小児医療の向上にも大きく貢献した。

さらに2015年には同小児病院をラオスにも設立し、約20万人の子どもたちの治療と医療人材の育成に尽力している。

【ボランティア部門(国内)】恒川礼子 特定非営利活動法人 筋無力症患者会 理事長

https://mgjapan.org/handbook/

受賞理由:同氏は、重症筋無力症の子どもの就園・学校生活に焦点を当てた類まれなコミュニケーションツールを開発し、子どもとその保護者、学校、そして地域の相互理解を支援している。

同氏は、41歳の時に指定難病の一つである「重症筋無力症」と診断された。

筋無力症とは全身の筋力低下や易疲労性、眼瞼下垂、複視などの症状を示す自己免疫疾患であるが、その症状の強度や頻度は人によってさまざまであり、中々その辛さが理解されにくい疾患の一つである。

同氏は、発症当時には全国筋無力症友の会に籍を置き、病気に関する情報収集や患者同士の交流などの活動を経て、2015年に自身が理事長を務める「筋無力症患者会」を設立し活動を開始した。

幼稚園教諭および保育士の資格を持つ同氏は、幼児教育に携わってきたことから、この疾患に限らず病気の子どもへの支援活動を行う。

病気の子どもを持つ保護者は、さまざまな制限を抱えながらも子どもの健やかな成長を願い、日々模索しながら家庭生活を送っているのが現状である。

特に園生活、学校生活は、子どもが保護者から離れた社会生活の一歩であるが、保護者の心配や不安は非常に大きく、学校関係者に対して子どもへの支援や配慮を求めたいものの、どのように伝え、どのように依頼したら良いかがわからないことが保護者の共通課題となっていた。

そこで重症筋無力症の子どもが通う園や学校関係者にこの病気を知ってもらい、学校生活の中で個々人に応じた具体的な支援や配慮をしてもらえるよう、「病気の子どもの学校生活 」、「病気の子どものための就園ハンドブック」という冊子を作成した。

このハンドブックは大きな関心を呼び、今では多くの幼稚園や学校で利用されている。

学校生活の中で、子どもが心身ともに大きく成長していくことを願う保護者にとって、自分の声の代弁者となるこのハンドブックは、かけがえなのない存在であり、コミュニケーションツールとなっている。

現在も保護者と学校関係者、ひいては地域の相互理解を深めるため、第三弾のハンドブック制作の企画が進んでいるという。

【医師部門】堀部敬三 独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 上席研究員

https://crc.nnh.go.jp/staff/horibe_keizo/

受賞理由:同氏の長年にわたる白血病治療研究は、日本の小児がんの標準治療確立を牽引するとともに、世界レベルの白血病・リンパ腫の診断・治療に関する科学的エビデンス創出や小児がんと成人がんが混在するAYA世代がんの医療と支援の確立に貢献した。

同氏は、名古屋大学医学部を卒業後、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターにリサーチフェローとして留学し、骨髄移植の基礎研究に携わった。

帰国後、名古屋大学医学部小児科、名古屋第一赤十字病院小児科において、小児血液分野の診療・研究に従事し、2001年から2019年まで独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター小児科医長ならびに臨床研究センター長を務めた。

この間一貫して小児がん、特に白血病リンパ腫の診療と臨床研究に携わり、小児がんの標準治療確立を目指した臨床試験の実施と多施設共同研究体制の構築に取り組んだ。

1996年に小児白血病研究会の設立を、2003年には日本小児白血病リンパ腫研究グループの設立を主導し、全国規模での白血病治療研究を牽引した。

また、当時は一般的ではなかった、説明に基づく文書同意導入や、科学的にデザインされた研究計画書作成、病理中央診断体制の構築とともに、多施設共同臨床研究の適切なデータ管理に不可欠な独立したデータセンターを名古屋医療センター内に構築し、欧米に匹敵する多施設共同臨床試験体制を整備し、50を超える臨床試験の実施により、国内外の白血病・リンパ腫の診断・治療に関する科学的エビデンス創出に大きく貢献した。

近年は、AYA世代急性リンパ性白血病の治療成績向上に向けて成人白血病治療共同研究機構との共同研究を進めるとともに、日本小児がん研究グループの体制整備に取り組み、「一般社団法人AYAがんの医療と支援のあり方研究会」を設立し、AYA世代がんの普及啓発を行っている。

同氏は、精力的な研究活動の一方で、患者やその家族のサポートに尽力し、行政や社会への積極的な働きかけも行っている。

AYA世代:Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の略。「AYA世代がん」という文脈で使われる。一般的に15歳~39歳の間に発生するがんを指す。

【医療・看護・介護従事者部門】林田菜緒美 株式会社リンデン 代表取締役 (在宅医療・介護ゆらりん)

https://yurarin.jp/company/

受賞理由:同氏は、人工呼吸器を使用している患者さんでも断らない看護小規模多機能型居宅介護(看多機)をつくり上げ、今では0歳から100歳までが自然に互助し合える新しい訪問看護を生み出すなど、これからの共生社会の創出に挑んでいる。

30代で看護師資格を取得した同氏は、病院勤務を経た後、2011年に訪問看護ステーション、2013年には神奈川県川崎市の第1号となった看護小規模型居宅介護(看多機)の事業所「ナーシングホームゆらりん」、2016年には重症心身障がい児を対象とした児童発達支援・放課後等デイサービス「KIDSゆらりん」を開設するなど、“地域で療養する医療ニーズの高い全世代の利用者” を支えてきた。

特に看多機では、介護者の自宅で過ごしたいという希望に寄り添うことと「呼吸器でも断らない」をモットーに、重傷者も泊りや通いを利用できるよう体制を整えた「ゆらりん家」やドライバー・看護師・介護職の3名体制による送迎サービスなど、在宅療養の限界点を高め、人生の最期まで、その人が望む暮らしを実現するためのケアに取り組んできた。

同氏の地域全体でのケアは広がり続け、認知症高齢者・軽度者の自立支援に向けて「ゆらりん家」と児童発達支援・放課後等デイサービスの「KIDSゆらりん」を統合したサテライトを小学校に隣接させ、0歳から100歳までが同じフロアで過ごすことができる環境をつくった。

2019年には川崎市からの受託事業により、「ゆらりん家」を日曜日に地域開放し、健康体操や「ゆらりん弁当」づくりを行っている。

さらに、2023年には「子どもだけじゃない食堂」を開設し、毎回90人の幼児から高齢者で賑わいを見せている。

同氏は、住民の困りごとに寄り添い、“地域にないものは作るしかない” の精神で、地域開放を通じて培った互助の考えにより、ボランティアにも支えられながら、支援する側・支援される側を超えた“つながり”により、これからの共生社会を創出している。

【パイオニア・チャレンジ部門】近藤克則 千葉大学予防医学センター 社会予防医学研究部門 教授/国立長寿医療研究センター研究所 老年学・社会科学研究センター 老年学評価研究部 部長

https://katsunorikondo.wixsite.com/labo
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/evaluation/index.html

受賞理由:同氏は延べ100万人規模の高齢者の社会疫学調査を日本で実現し、健康格差社会という社会課題と解決に向けた数々の研究・提言を行い、次代の地域保健・公衆衛生に寄与している。

20年以上にわたり日本老年学的評価研究を主宰する同氏は、地域保健・公衆衛生において重要な視点である「健康格差社会」「ソーシャル・キャピタル」などの新しい概念を日本に紹介し、多くの実証研究を重ねてきた。

全国数十の自治体の協力を得て疫学調査を3年毎に行い、延べ100万人以上という世界有数の高齢者の社会疫学調査となっている。

同調査からは日本においても「所得や学歴、地域間に健康格差が存在する」こと、ライフコース疫学では「小児期や就労期の社会経済的要因が高齢期の健康にまで影響を及ぼす」ことを解明し、地域介入研究や被災地研究により、ソーシャル・キャピタルの豊かさなど、社会環境要因が健康格差の緩和要因と成り得ること等を明らかにした。

その過程では、疫学に留まらず、社会福祉学や社会学、健康科学など、学際的な研究チームを組織し、多くの若手・中堅研究者を育成してきた。JAGESの800編本を超える研究成果は、書籍「Katsunori Kondo, editor: Social Determinants of Health in Non-communicable Diseases. Springer, 2020」をはじめ、自治体の介護保険事業計画や中央省庁の政策文書に引用され、国際的にも「知識のトランスレーション」の好事例として評価され、その取り組みはWHOから出版(2018年)されている。

近年では国立研究開発法人科学技術振興機構産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)の一環で、多くの企業との産学共創研究にも取り組み、領域の架橋的な研究組織をリードし、多くの成果を上げている。

―――へルシー・ソサエティ賞(http://www.healthysociety-sho.com/)は、「今後も有意義な活動を行う人々やその活動の顕彰を通じ、健やかな社会づくりの実現を支援していく」という。

左から、玉井 孝直、井津 建郎、萱間 真美、林田 菜緒美、恒川 礼子、堀部 敬三、近藤 克則、高橋 弘枝(敬称略)

第19回「ヘルシー・ソサエティ賞」審査委員・諮問委員(五十音順、敬称略)

<審査委員>

蒲原 基道 日本社会事業大学専門職大学院 客員教授、元厚生労働事務次官

川口 順子 武蔵野大学国際総合研究所 名誉顧問、元参議院議員、元外務大臣、元環境大臣

竹内 行夫 元最高裁判事、元外務事務次官

堂本 暁子 男女共同参画と災害・復興ネットワーク 代表、元千葉県知事、元参議院議員

中釜 斉 国立研究開発法人国立がん研究センター 理事長

永井 良三 自治医科大学 学長

坂東 眞理子 昭和女子大学 総長

松本 吉郎 公益社団法人日本医師会 会長

村嶋 幸代 大分県立看護科学大学 理事長・学長

<諮問委員>

安達 知子 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院 名誉院長、東京女子医科大学産婦人科 客員教授

後 信 公益財団法人日本医療機能評価機構 執行理事、九州大学病院医療安全管理部 教授・部長

加藤 良太朗 板橋中央総合病院 院長

神村 裕子 公益社団法人日本医師会 常任理事

木寺 昌人 元駐フランス大使、元駐中国大使

日下 一正 一般財団法人国際貿易投資研究所 理事長、元経済産業審議官

玄葉 光一郎 衆議院議員、元外務大臣

小林 秀明 元駐タイ王国大使、元迎賓館長、元東宮侍従長、株式会社電算 社外取締役、帝京大学冲永総合研究所 名誉教授

坂本 すが 東京医療保健大学 副学長

清水 嘉与子 公益財団法人日本訪問看護財団 理事

下村 満子 ジャーナリスト、元「朝日ジャーナル」編集長

中林 美恵子 早稲田大学 教授、元衆議院議員

丹羽 雄哉 元衆議院議員、元自由民主党総務会長、元厚生大臣

半田 宏 東京工業大学 名誉教授、東京医科大学 兼任教授

久常 節子 元社団法人日本看護協会 会長

平林 博 公益財団法人日印協会 理事・副会長

藤原 誠 東京国立博物館 館長

堀江 重郎 順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学 教授

松谷 有希雄 日本公衆衛生協会 理事長

南 裕子 神戸市看護大学 名誉教授

美原 盤 公益財団法人脳血管研究所美原記念病院 院長、公益社団法人全日本病院協会 副会長

矢﨑 義雄 学校法人東京医科大学 理事長、独立行政法人国立病院機構 名誉理事長、国立国際医療センター 名誉総長

山本 信夫 公益社団法人日本薬剤師会 会長

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