2024年3月16日の北陸新幹線の延伸により、いよいよ福井県にも新幹線が開業しました。1973年に整備計画が決定されてから約50年かかっての、県民が待ち望んでいた新幹線開業です。現時点の北陸新幹線の終着駅となる敦賀駅は、近畿・中部地域などから特急で来る乗客と、北陸新幹線を利用して関東や北信越各県方面からで訪れる乗客が乗り換えるための、重要な駅として機能することとなります。

日本一の高さの新幹線ホーム・駅舎の敦賀駅

敦賀市は 江戸時代には現在の大阪と北海道とを結んだ「北前船」の寄港地として栄えた北陸地域の重要拠点で、敦賀駅は新橋~横浜間の鉄道開業のわずか10年後となる1882年に開業したという歴史のある駅です。その敦賀駅ですが、2021年9月に新幹線が入る新駅舎の本格的な建築工事が始まり、今回新しい駅舎は2024年3月16日の北陸新幹線の延伸開業に合わせて本格稼働が始まることになります。

敦賀駅の新駅舎の高さは約37メートルで、12階建てのビルに相当します。新幹線ホームは3階に設けられ、地上から21メートルの高さになり、駅舎の高さとともに日本一の高さになります。敦賀駅の北東にある国道8号線敦賀バイパスの上空を新幹線を通すになたり、この高さが必要だったということです。

「空にうかぶ ~自然に囲まれ、港を望む駅~」

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敦賀駅舎の整備を行った独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT 鉄道・運輸機構)によると、この駅のデザインコンセプトは、敦賀市が提案した「空にうかぶ ~自然に囲まれ、港を望む駅~」。

敦賀駅舎建設に関する報道発表資料より(写真:JRTT 鉄道・運輸機構)

駅からほど近い敦賀ための表現し、豊かな自然を感じられる駅をイメージしているといいます。

新幹線ホーム上に大屋根が設置されている(写真:JRTT 鉄道・運輸機構)

新幹線と在来線を結ぶ重要な乗換え駅

敦賀駅は、3階には島式2面4線新幹線ホーム、2階には乗換えコンコース、その直下部分の1階には島式2面4線の在来線特急ホームが設けられる、3層構造の駅となります。
新幹線⇔在来線特急の乗り換えは、3階と1階の間を、2階のコンコースを経て縦方向の移動で行われるという事になります。その乗り換え利便性を考慮して、昇降設備としてエスカレーター26基、エレベーター6基、そして乗換え改札機としては19通路を備えた施設となっています。

3月16日からの新幹線⇔在来線特急の乗り換えの想定は、最短8分でのダイヤが組まれています。開業前の1月に行った乗り換えシミュレーション・公開模擬訓練の際には、新幹線の乗客役になった約900人が、乗り換えを完了するまでに13分かかったとされています。それを踏まえて、JR西日本では、色々な事項で新たな検討を進めた上で、実際の延伸開業日である3月16日をむかえるということになります。

JR西日本が行った乗換え時間短縮の取り組み

乗り換え時間短縮のための対策として、まずは在来線特急であるサンダーバードとしらさぎの停車位置を、当初の想定より約60メートルずらすことを行うようです。それにより、ホームの特定の場所に乗客が集中するのを防ぎ、ホームの混雑を緩和するという狙いがあります。

また、乗り換えのための上下階間の移動の円滑化のため,エレベーターやエスカレーター・階段の位置を案内サインでわかりやすく示すという事も行います。
新幹線から在来線特急への乗り換え時にには、新幹線つるぎ号1列車から、サンダーバード号、しらさぎ号の2列車それぞれに乗車される乗客が同時に移動する場合もあり、一つのエスカレーターの集中・混雑を避けるため、サンダーバード号としらさぎ号の乗り場までをわかりやすく示すことで、スムーズな乗り換えができるようにする工夫を行います。

敦賀駅の乗り換え表示(写真:JR西日本)

駅構内の案内サインの他にも、敦賀駅乗換案内動画を公開し、北陸新幹線各駅や特急停車駅にある告知ポスターや北陸新幹線車内背面テーブルなどにあるQRコードからこの乗換案内動画にアクセスできるようにしています。
また、下記のようなリーフレットを、在来線特急車内 の網袋に設置するなどの取り組みを行っております。

敦賀駅での乗り換え方法の車内リーフレット (画像:JR西日本)

こういった取り組みの効果がどうなるのか、3月16日の実際の開業以降の様子を見守りましょう。

観光地や見どころいっぱいの街・敦賀

今回新しくなった敦賀駅ですが、乗り換えの際に短時間で多くの人数が移動できるように、コンコースの長さや(200m)コンコースの広さ(5200㎡)も日本一ということですので、訪問した際には是非ご覧ください。

さて、この敦賀市ですが、「北前船」の拠点として栄えただけあり、たくさんの歴史的な建造物も残る魅力的な場所で、乗り換えだけで通過してしまうのはもったいない場所です。
敦賀駅から2キロ弱という場所に敦賀湾・日本海があり、海産物が豊富に採れ、古くから昆布やかまぼこなどの水産加工業が発展しています。また海側を除く三方は山に囲まれており、自然や歴史を体験できる魅力的な観光地もたくさんあります。

左/ 氣比神宮と 右/ 道の港 敦賀ムゼウム(写真:福井県観光連盟)

重要文化財で日本三大木造大鳥居のひとつでもある「氣比神宮」、1905年紐育スタンダード石油会社によって建てられたモダンな倉庫「敦賀赤レンガ倉庫」、明治から昭和初期にかけてのヨーロッパとの交通の拠点としての役割を担った敦賀港の史実を後世に伝える資料館「人道の港 敦賀ムゼウム」、福井の海の幸が集い海鮮丼や寿司、地元の特産品を楽しめる巨大市場「日本海さかな街」、かつての”欧亜国際連絡列車”の発着駅だった敦賀港駅舎を再現したとんがり屋根の印象的な建物「旧敦賀港駅舎(敦賀鉄道資料館)」、南北朝時代の延元元年(1336年)には、恒良と尊良両親王を守護した新田義貞が足利軍と戦った古戦場「金ヶ崎城跡」など、紹介しきれないほどの魅力的な場所の数々が街の中に点在しています。

左/日本海さかな街と 右/敦賀赤レンガ倉庫(写真:福井県観光連盟)

この新幹線の開業を契機として敦賀市では様々な開発計画も進められています。その中の一つ、敦賀湾に面した金ヶ崎周辺地区では、来訪者にとって魅力あるまちづくりの計画などが進められ、今後ますます立ち寄って楽しむべき街へと変貌しそうです。

金ヶ崎周辺魅力向上デザイン計画パース図 ( 画像:敦賀市 ©OMA )

今回の北陸新幹線の延伸開業で、北陸の各県の間の移動は今までよりも大幅に便利になります。観光庁が行う北陸地域4県(石川県・富山県・福井県・新潟県)の旅行商品・宿泊料金の割引を支援する「北陸応援割」も始まりましたので、敦賀市も含めて数か所の福井県や北陸地域の周遊旅行などの計画を立ててみるのが良いかもしれません。

是非、この機会に福井県・敦賀市を訪れてみてください。

(鉄道チャンネル)

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