どこか日本の鉄道車両を思わせる日立製インターシティ「Nova1」(写真:日立製作所)

非電化の鉄道を走る旅客列車といえばディーゼルエンジンを搭載した気動車が思い浮かぶが、〝電気を貯める技術〟の進化で、架線(第3軌条も)のない路線を走る電車が現実味を帯びている。

日立製作所グループで海外鉄道事業を手掛ける日立レールは2024年5月24日から、新型バッテリーシステムを搭載した高速鉄道車両による、バッテリー機能や走行性能試験に乗り出した。

試験は、イギリスのTransPennine Express(トランスペナイン・エクスプレス)、Angel Trains(エンジェル・トレインズ)の両社と共同で実施。同国の高速鉄道で、エンジンをバッテリーに換装するのは初めて。2024年夏には実際の路線での走行試験に入る予定。

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共同事業者のうちトランスペナイン社は、イングランド北部やスコットランドに路線ネットワークを持つ。エンジェル社は、イギリス国鉄の民営化で1994年に誕生した鉄道車両会社で、インターシティ車両を保有する。

試験に供用されるのは、日立がイギリス向けに納入したインターシティ車両「Nova1」(5両編成)。2018年に営業運転を開始、電化区間、非電化区間の双方を走れるバイモード車両だ。ディーゼルエンジンで発電機を駆動する電気式で、実験では発電機代わりにバッテリーで列車を走らせる。

搭載するバッテリーシステムは非常に強力で、75世帯以上の住宅に1日分相当の電力を供給する能力を持つ。

実験車両は発電用エンジンがないので、排出ガスを削減し、エネルギー効率も向上。日立は排ガスと燃料コストを最大30%削減できると試算する。

日立が試験で目指すのは、バッテリーだけで最長100キロを走行できる航続性能。イギリスには非電化線区が数多く残るが、高度なバッテリー性能で、非電化区間への拡大可能性が高まる。

実験開始に当たり、日立レールのジム・ブルーイング チーフディレクターUK & アイルランドは、「日立はイギリス初のバッテリー車両の技術実現のため、1500万ポンド(約30億円)以上を投資した。バッテリーは2016年から日本で厳しい性能試験を受けている。日立は、イギリス鉄道の脱炭素化と近代化を強力に支援したい」とコメントした。

記事:上里夏生