次世代の電車線は電線本数を3分の1に削減!SMARTインテグレート架線 をJR東日本が高崎線に初導入
JR東日本は、将来的な労働人口減少を見据えた設備改良の一環として、新しい電車線設備「SMART インテグレート架線」を高崎支社管内に初めて導入することを発表しました。この新技術は、電線本数を大幅に削減し、設備のスリム化とメンテナンスの省力化、さらには高所・夜間作業の負担軽減による働き方改革の実現を目指すものです。2025年5月16日から高崎線の新町駅〜倉賀野駅間(下り線)で運用が開始されており、今後全社的な導入拡大も計画されています。
電車線設備の進化形「SMART インテグレート架線」とは?
JR東日本が今回導入を進める「SMART インテグレート架線」は、電車に電気を供給する電車線設備において、電線の本数を大幅に減らすことで、設備のスリム化と省メンテナンス化を図る新技術だという事です。
電車線設備は、電車のパンタグラフに電気を供給する「トロリ線」、トロリ線を適切な高さに吊る「ちょう架線」、変電所からの電気を送る「き電線」、そしてこれらの電線を支える「電車線支持物」で構成されています。
従来の電車線設備である「ツインシンプル架線」が6本の電線で構成されていたのに対し、SMART インテグレート架線は「き電ちょう架線」を1本に集約することで、電線本数をわずか2本に削減しています。この集約は、軽量なアルミ系電線の採用と、風による抵抗を約3割、重量を約6割低減する特殊な断面形状によって実現しました。
工事費削減と働き方改革への貢献
「SMART インテグレート架線」の導入は、工事費の削減と働き方改革に大きく寄与するとされています。電線の軽量化と本数削減により、電車線支持物にかかる荷重が減少し、施工時の支持物の建て替えを減らすことができるため、工事費の削減が見込まれます。
また、従来必要であったき電線が不要となり、き電ちょう架線も1本に集約されることで、架線構造が大幅に簡素化されます。これにより、これまで実施していたき電線の徒歩による検査が不要になり、き電ちょう架線の検査も1本で済むため、検査の省力化が実現します。電線本数が3分の1に削減されることで、修繕工事や将来的な取り替え工事の対象設備も大幅に減少し、作業員の負担軽減と安全性の向上が期待されています。特に、高所や夜間に行われることの多い電車線設備の保守作業において、作業回数の削減は大きなメリットとなると考えられます。
導入区間と今後の展望
この新しい「SMART インテグレート架線」の導入対象区間は、高崎線の新町駅〜倉賀野駅間(2.2km)で、下り線は2025年5月16日よりすでに導入が開始されており、上り線は2026年2月に導入が予定されています。
JR東日本では、今回の導入箇所での施工性やメンテナンス性を検証した上で、将来的には全社的な導入拡大を計画しており、今後も設備のスリム化や省メンテナンス化を進め、働き方改革の実現を推進していく方針です 。
「SMART インテグレート架線」は、単なる設備の更新に留まらず、省力化と作業環境の改善を通じて、鉄道インフラを支える現場の働き方改革に繋がる重要な取り組みといえます。
(画像:JR東日本)
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