北陸新幹線をめぐる2つの課題 揺れる敦賀以西のルートと〝長野新幹線〟の貸付料問題を考える【コラム】

2024年3月の金沢~敦賀延伸開業からまもなく2年。
北陸新幹線の敦賀以西、新大阪までの未着工区間。与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)が、敦賀~小浜~京都~新大阪の「小浜京都ルート」を採用したのは2016年12月です。9年を経過した2025年12月、自民党と日本維新の会で再編された与党PTは、ルートを再検討することにしました。
再スタートした与党PTで、議論のたたき台になるルート案は全部で8案。既定の小浜京都ルートのほか、いったんは消滅した「米原ルート」も復活しました。
本コラムはルート再検証の背景などを深掘り。あわせて、1997年10月に北陸新幹線最初の区間として開業した高崎~長野間(当時は「長野新幹線」でした)の貸付料問題に関しても近況を追います。
(本稿は関係機関などの考え方を客観的に検証する目的で、特定の見解を支持あるいは批判する意図はないことを十分にご理解願います)
「米原ルートに変更を」(維新)
ルート再考の出発点が、日本維新の会国会議員団などが2024年6月、国土交通省に提出した「北陸新幹線大阪延伸ルートに関する提言書」です。
維新の会の馬場伸幸、教育無償化を実現する会の前原誠司の両代表(役職名はいずれも当時)連名の提言書では、「敦賀以西の整備で先が見通せない小浜京都ルートは撤回。米原ルートに改めることが現実的かつ合理的で、政府・与党に対し変更を強く求める(要旨)」と訴えました。

小浜京都ルートvs米原ルート。数字は2016年当時のものですが、概算事業費は小浜京都約2兆700億円、米原約5900億円。費用便益比は小浜京都1.1、米原2.2です。
数字上は米原が有利ですが、最大の問題点は関西から北陸方面に向かう場合、米原で東海道新幹線から北陸新幹線への乗り換えが必要になること。JR西日本は小浜京都ルートを強く推します。

ルートを決めるのは国交省(?)
整備新幹線ルートの選定方法を再確認します。ルートが複数案ある場合、双方の沿線が引き合い一本化は困難になります。
そこで政府などが編み出したのが、国民の代表の国会議員に判断をゆだねる選定方法。政府(実質は国土交通省)は工事費、工期、時間短縮効果、採算性などを試算して与党PTに提示します。
PTは政府試算とともに沿線自治体やJRといった関係機関からヒアリングして、どのルートが最適かを判断します。
少々の書きすぎを承知でいえば、ルートを実質的に決めるのは国交省。与党PTがお墨付きを与えて成案にするのです。
8ルートを俎上に
2024年の提言書提出から1年余、日本維新の会は2025年10月に連立政権入りして与党になりました。維新は自民党にルート再考を申し入れ、少数与党の自民も承諾しました。
ここからは報道の範囲内。維新は議論のフルオープンを主張したようですが、自民は難色を示しました。相も変わらず報道や周辺取材に頼らざるを得ないのですが、維新が示したのは次の8ルートです。
既定の「小浜京都(①)」以外では、一度は消えた「米原Ⅰ(②)」と「同Ⅱ(③)」。Ⅰは米原止まりで、米原~新大阪は建設しません。乗客は米原駅で東海道新幹線に乗り換えますⅡは米原から東海道新幹線に乗り入れます。
琵琶湖西側を経由するのが「湖西Ⅰ(④)」と「同Ⅱ(⑤)」。ⅠはJR湖西線に平行して、琵琶湖西回りの新幹線規格の新線を建設。Ⅱは在来線のJR湖西線を改軌して(線路幅を広げて)、新幹線が走れるようにします。
小浜京都以外で小浜を経由するのが「小浜亀岡(⑥)」、「舞鶴京都(⑦)」、「舞鶴亀岡(⑧)」の3ルート。小浜亀岡と舞鶴亀岡は、いずれも京都を経由しないで亀岡から新大阪に直行します。
舞鶴京都は、2016年にいったん消えたJR山陰線に並行するルートの復活。小浜、舞鶴、京都を経由して、東海道新幹線の南側から新大阪にいたります。
(以上のルート名と番号は筆者が便宜的に付したもので、与党PTとは異なる可能性があります)
2026年末までに成案(前原共同座長)
議論はどう進むのか。再編PTの共同座長を務める前原誠司維新顧問(衆議院京都2区)は2026年末までに成案を得る方針のようですが、仮に米原ルートが復活すれば、小浜市をはじめ小浜京都ルート沿線自治体や選出議員から異論が出るのは必至です。
小浜市の杉本和範市長は2025年12月25日の会見で、「これまでの経緯を白紙に戻すようで遺憾だ」と苦言を呈しました。
与党PTで議論の土台になる8ルート路線図などは現時点では非公表。筆者としては開かれた議論のためにも、早期のオープン化を求めたいと思います。
「国交省vsJR東日本」長野新幹線貸付料
後段は整備新幹線の貸付料をめぐる問題。整備新幹線は国(実質は鉄道建設・運輸施設整備支援機構=JRTT)が公共事業として建設し、JRは線路を借りて列車を運行します。

整備新幹線のトップを切って1997年10月に開業した北陸新幹線高崎~長野。JR東日本は年額の175億円の貸付料を支払います。
支払いスキームの有効期間は開業30年で、2027年が期限。2年後に控え、勃発したのが国交省vsJR東日本の論争です。
北陸新幹線の利用は比較的堅調。貸付料引き上げをもくろむ国交省に対し、JR東日本は「当社の同意を得ない値上げは認められない」と反発します。
貸付料問題は、国の交通政策審議会今後の整備新幹線の貸付のあり方に関する小委員会で議論。資料は原則オープンですが、JR東日本分は一部が非公表です。
国交省は2026年夏に結論を出す方針ながら、敦賀以西ルートと同じく難航も予想されます。
記事:上里夏生
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