貴重な鉄道遺産のレールを披露する式田将規京成タクシー茨城社長、室田英之関鉄取締役、萩原龍ケ崎市長、十文字活性化協会長、真中嗣夫関鉄竜ケ崎駅長=写真右から=(画像:龍ケ崎市地域公共交通活性化協議会)

数ある鉄道ファンに「レール愛好家」と呼ばれる人たちがいることをご存じの方も多いだろう。鋼鉄が貴重品だった戦前まで、列車が走る線路としての役目を終えたレールは建築資材として重宝された。ホーム上屋の柱などに古レールが再利用される事例も多く、メーカー名の刻印を求めて各地を訪ね歩くファンも多い。

ご紹介するのは、レアな古レールをめぐる話題。茨城県龍ケ崎市を走る関東鉄道竜ヶ崎線の駅施設で見つかった鉄道黎明期の輸入レールが、日本近代化の歩みを示す鉄道遺産として地元の龍ケ崎市歴史民俗資料館に寄贈された。

国産技術が未成熟だった明治初期、SLばかりでなくレールも海外から輸入された。今回、歴史的な古レールが発見されたのは、関鉄竜ヶ崎駅前にあった旧関鉄タクシー竜ケ崎営業所の車庫。上屋の支柱に使用されていた。

車庫解体にあたってレールを調べたところ、「IRJ(Imperial Railway of Japan・日本帝国鉄道発注)」の刻印が判明。鉄道史料などから日本初の新橋~横浜鉄道開業翌年の1873年、イギリス・ダーリントン社で製造されたレールと判明した。

レールファンのこだわりでは、新橋~横浜に敷設されたのは摩耗した後は上下反対にして再利用できる双頭レール。その点、ダーリントン社製は現代と同じ平底レールという違いがあり、竜ヶ崎駅で発見されたのも平底レールだ。

竜ヶ崎線で使用された経緯は不明ながら、「1900年に軌間762ミリの軽便鉄道として開業した竜崎鉄道が15年後、一般鉄道に改軌する際に譲受されたのでは」と、関係者は推測する。ちなみに、建築資材の形で各地に残る明治期のレール、今回のように定尺(一般には20メートル長)で見つかるケースは比較的珍しいという。

レールは資料館への寄贈にあたり刻印部分中心に1メートル長に切り取った上で、劣化を防ぐコーティング処理を施し、発見者の龍ケ崎市地域公共交通活性化協議会から同市歴史民俗資料館に寄贈された。

資料館でのセレモニーには龍ケ崎市の萩原勇市長(2025年12月21日の市長選で再選)、活性化協の十文字義之会長らが出席した。

龍ケ崎市歴史民俗資料館は関鉄竜ケ崎駅またはJR常磐線龍ケ崎市駅からバス。毎週月曜日と年末年始(12月28日~1月4日)は休館する。

記事:上里夏生

【関連リンク】