大正年間開業の川砂利採取駅が〝新しいイトナミの駅〟に生まれ変わる! 京王多摩川駅にミニ紀行(東京都調布市)【コラム】

首都圏で今、注目の鉄道路線の一つが京王相模原線でしょう。京王線調布から分岐して、JR横浜線・相模線と接続する橋本にいたる22.6キロの線区。注目の理由は、橋本近くに開業するリニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮称)」です。相模原線は、リニアと東京都心をつなぐアクセス路線になります。
今回、相模原線で取り上げるのは調布駅の次駅の京王多摩川です。京王電鉄とグループの不動産開発会社・リビタが駅西側で手がける大型開発の京王多摩川ハモンズ、2025年9月にエリア名が「itonami(イトナミ)」に決まりました。駅高架下を利用した〝場づくり企画〟もアナウンスされました。
京王多摩川駅の歴史の始まりは大正年間。当時の駅名は多摩川原、路線名も多摩川支線でした。主な目的は多摩川の砂利輸送で、砂利採取場跡地などに誕生したのが娯楽施設「京王閣」。現在も「京王閣競輪場(通称・東京オーヴァル京王閣)」に名を残します。
本コラムは多摩川を渡る京王電車を撮影がてら、京王多摩川、調布の駅界わいを散策。相模原線の略史とともに、生まれは電力会社系の不動産会社というリビタの戦略もご案内します。
本八幡から京王多摩川に直行
京王多摩川へのミニ紀行、スタートは千葉県の本八幡です。本八幡が始発の都営新宿線、日中時間帯は1時間当たり最大6本の橋本または京王多摩センター行きが運転されます。京王多摩川発新宿方面ダイヤでは、多くの列車が都営新宿線に直通します。

京王多摩川駅前で開発が進む「イトナミ」。2021年5月に閉園した「京王フローラルガーデンアンジュ」跡地を中心に約2万8000平方メートルを総合開発。A~C棟の3棟を建設します。
プロジェクトは2025年5月に本格着工。同年9月にはエリア名が「イトナミ」に決定しました。同時に「イトナミや京王多摩川を舞台にした場づくり」という、エリア再開発の考え方が公表されました。

「イトナミを集いの場に」
「場づくり」という若干抽象的な開発の基本、筆者なりにかみ砕きます。
新しくイトナミに暮らす住民の皆さん、平日は東京都心のオフィスで働き、休日は地元の京王多摩川や調布で過ごす方が大半でしょう。「そんな時、地元に集える場をつくりる」というのが京王の狙いです。

京王の成功例が2024年4月、高尾駅南口に誕生した商業施設「KO52(ケーオーゴーニー)」。既存の京王ビルをリノベーション、住民の集いの場として地ビール工房「高尾ビール」が創業しました。
イトナミの場づくりのトップバッターとして、2025年7月に実施された「1YY CLUB」。読み方はワンワイワイクラブとかなりの考えオチですか、みんなかワイワイ話し合える集いの場という意図は伝わりますね。
場づくりを主導するのが、東京都目黒区に本社を置くスマイルズ(企業名)です。三菱商事から独立した社内スタートアップの先駆けで、2025年度初からイトナミのプロジェクトに参画。1円から借りられるキッチンカー屋台など、ユニークなアイディアを打ち出します。
トップのB棟は2027年7月ごろ開業
ここでイトナミのプロジェクト概要。A~C棟のうち、B、C棟のスペックが公表されています。

B棟は賃貸住宅と福祉棟で、敷地面積9614平方メートル、延べ床面積2万6486平方メートルの10階建て。施設内に調布市の医療ステーションが設けられます。
C棟は分譲住宅棟で、同じく6434平方メートルと2万3869平方メートルの12階建て。開業(入居開始)時期はB棟が2027年7月ごろ、C棟が2028年1月ごろです。A棟は現在未定とのことです。
砂利採取場跡に「京王閣」
ここで京王相模原線のミニヒストリー。京王多摩川(東京都調布市)~京王稲田堤(川崎市多摩区)間で多摩川を渡りますが、1916年の開業時は多摩川の北岸止まり。先述のように当初の駅名は多摩川原、路線名も多摩川支線でした。
多摩川支線は川砂利輸送が主目的でしたが、戦前のうちに砂利採取は衰退。京王は積み出し場跡などを一体開発して、現代風にいえばレジャー施設「京王閣」(その後「京王閣競輪場」)などをオープンしました。

相模原線の京王多摩川以遠は、1971年に京王よみうりランドまで延伸開業。1974年には京王多摩センターに線路を延ばし、時代が平成に変わった1990年に橋本到達、全線が開業しました。
近未来にはリニアアクセスが加わる相模原線ですが、現在は人口20万人を擁する多摩ニュータウンのアクセス輸送が主な役目。京王多摩川以遠の開業は1970年以降と比較的新しいことから、道路とはすべて立体交差。近代的な相模原線は、一部に開業時の路面電車の雰囲気を残す新宿~調布間とは対照的な表情をみせます。

金沢のシェア型ホテルでリビタを知る
ラストに、イトナミで京王のパートナーになるリビタとは。
個人的な話で恐縮ですが、筆者がリビタを知ったのは北陸。北陸新幹線金沢延伸開業翌年の2016年、「観光ブームに沸く金沢に新しいシェアホテル『HATCi(ハッチ)金沢』が開業」というニュースをキャッチして出張した金沢で知ったのがリビタと、京王グループということでした。
ハッチ金沢、館内には金沢で人気の飲食店やカフェが入り、地元で活動するアーティストのインテリア作品が宿泊客を迎えます。こうした発想はイトナミに共通します。
リビタのプロジェクトで取り上げたいのが「PATH(パス)」シリーズです。経年マンションを全戸一括でリノベーションして再生。2019~2025年度に東京と神奈川で20棟が竣工しました。最新の「PATH高円寺」(東京都杉並区)は、2026年2月24日に内覧会が開かれました。

鉄道会社の関連事業として、なじみ深い不動産開発。確かにその通りですが、リビタが目指すのはもう一歩踏み込んだ沿線外も含めた不動産開発。リビタの物件購入者には、京王グループということを知らない人もいて、鉄道会社が目標にする「親会社から独立して市中進出するビジネス」を実践します。
記事:上里夏生
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