京都・祇園の新たな顔として2026年3月に開業した「帝国ホテル 京都」。7月9日には、継承された建物が「旧弥栄会館」として国登録有形文化財の継続登録が決定。大きな注目を集めています。
約1万6,000枚のオリジナルタイルや意匠を「生け捕り」にして保存活用した全55室の空間は、最新の耐震性を備えつつも1936年当時の歴史の息吹を色濃く残しています。また、京都ならではの食材を取り入れた限定メニュー「弥栄バーガー」など、ここでしか得られない食と建築の体験が揃っています。
本記事では、解体の危機を乗り越えて祇園の町並みに溶け込むホテルへと生まれ変わった旧弥栄会館の見どころから絶品グルメ、アクセス情報まで詳しく解説します。次の週末は、少し背伸びをして京都の奥深い魅力に触れるおでかけを計画してみませんか?

祇園の歴史を受け継ぐ「帝国ホテル 京都」の誕生

1936年竣工の「旧弥栄会館」が新たな寛ぎの舞台へ

京都の春を彩る「都をどり」が披露される祇園甲部歌舞練場。そのすぐ隣で、1936年から祇園の町を見守り続けてきたのが「弥栄会館」です。演劇や映画、ダンスホールとして地元で親しまれてきたこの建物が、2026年3月5日、「帝国ホテル 京都」としてふたたび開場しました。
建物の老朽化で一時は解体も危ぶまれていましたが、帝国ホテルは「弥栄会館を残す」という決断を下します。結果として2026年7月9日、文化審議会を経て「旧弥栄会館」として国登録有形文化財の継続登録が決定。祇園のシンボルが失われずに済んだのは、建物好きやおでかけ好きにとって嬉しいニュースです。

約1万6,000枚のタイルを保存!大林組が挑んだ解体工事

歴史ある建物を残しながらホテルへと再生させる工程は、まさに至難の業。設計・施工を担った大林組は、高さ31.5メートルというかつての高さを維持するため、花見小路から見える南西面の外壁を残す「外壁保存」に挑みました。

外壁タイルの保存(画像:株式会社大林組)

外装を覆っていたタイルは、職人の手で1枚ずつ慎重に取り外す「生け捕り」を実施。なんと全体の約10%にあたる1万6,387枚ものオリジナルタイルが救出され、再び外壁を飾っています。

テラコッタのレリーフ(左)、銅板屋根(中央)、再利用したエッチングガラス(右)

さらに、唐草文様の一種「宝相華(ほうそうげ)」の文様が印象的な外壁のテラコッタレリーフも保存・修復。実はこのテラコッタ、帝国ホテル2代目本館(ライト館)と同じ愛知県常滑市で製造されたもの。時空を超えた不思議な縁に、思わず胸が熱くなりますね。
また、劣化していた屋根は銅板でオリジナルの形状と寸法を忠実に再現して作り直し、正面玄関の風除室まわりは、天井と壁材の一部を保存して再利用。内装には、梅の枝の文様が描かれた創建時のエッチングガラスを再利用しています。

「帝国ホテル 京都」で味わう特別な時間と食の体験

オールデイダイニング『弥栄』で味わう伝統と革新の味

弥栄バーガーと弥栄カレー

ホテルステイの楽しみといえば、やはり食事。料理長の今城浩二さんが腕を振るうオールデイダイニング『弥栄』では、帝国ホテルで135年受け継がれてきた味に京都ならではの要素を掛け合わせています。例えば「弥栄バーガー」。伝統のデミグラスソースやパティの配合はそのままに、九条ネギの食感や黒七味の辛味をプラス。一口頬張れば、肉の旨味と和のスパイスが見事に調和し、食欲をそそります。薪窯で焼いた香ばしい肉と野菜がたっぷりの「弥栄カレー」も人気です。
フランス料理『練』で提供される、直径8.5cm以上の神山椎茸に亀岡牛の生ハムを合わせたシグネチャーメニューも必見。外壁のテラコッタをモチーフにしたチュイールが添えられた逸品です。生産者の思いが詰まったひと皿、じっくり堪能したくなります。

新素材研究所が手がける「古いものが、新しい」空間デザイン

ホテルの内装を手がけたのは、榊田倫之さんと杉本博司さんが率いる「新素材研究所」。日本古来の自然素材を活かし、“古いものが、新しい”というコンセプトのもと、五感に訴えかける寛ぎの空間を創り上げました。
館内には、かつての弥栄会館の貴賓室で使われていた「田皆石」が大胆に配置され、天井には梅の枝が描かれた創建時のエッチングガラスが再利用されています。木の香りや漆喰の調湿機能など、日本的な作法が息づく全55室の客室。歴史の壮大な時間軸に身を委ね、ゆったりとした週末のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

「帝国ホテル 京都」アクセス

ホテルが位置するのは、京情緒あふれる花見小路通にほど近い祇園の中心エリアです。最寄り駅である京阪本線「祇園四条駅」からは徒歩約8分阪急京都線「京都河原町駅」からは徒歩約10分と、周辺の観光地巡りにも抜群の立地を誇ります。
遠方から東海道新幹線を利用してJR京都駅に降り立った場合は、タクシーで約15分(道路状況によります)。公共交通機関を利用するなら、JR奈良線で「東福寺駅」へ向かい、京阪本線に乗り換えて「祇園四条駅」を目指すルートがおすすめです。

一度は姿を消しかけた祇園のシンボルが、職人たちの熱意と最新技術によって蘇った「帝国ホテル 京都」。
単なる宿泊施設という枠を超え、建物自体がひとつの大きな芸術作品のように訪れる人を迎え入れてくれます。歴史ある空間で京都の風情を感じながら、伝統と革新が織りなす美食を味わう――。そんな、大人だけに許された極上の「古いものが、新しい」体験を、次の京都旅行の目的にしてみてはいかがでしょうか。

(画像:帝国ホテル、TOP画像:Masatomo Moriyama)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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