12月1日、埼玉県深谷市。JR高崎線の小さな駅に、キラッキラの灯と歓声がわいた―――。

2016年度の1日平均乗車人員3247人、平屋建ての木造駅舎を持つ岡部駅。

この小さな駅の冬の風物詩“駅前イルミネーション”が、12月1日から始まり、初日の1日に点灯式が行われた。

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この日、17時半ごろになると、地元の親子連れや老夫婦、小中学生たちがこの小さな駅に集まってくる。

「駅前が人でこんなに混み合うのは、この点灯式の日ぐらいじゃないか」と地元の人は笑う。

地元の大学と商工会による“冬の風物詩”

このイルミネーション点灯式、「年々、参加者が増えてきている」と語るのは、埼玉工業大学に通う4年生、沖山祐太さん。

夜になると人通りも灯りもなくなる岡部駅前に、3万球のLEDを施したのは、この駅が最寄りの埼玉工業大学の学生たち。

彼らは、埼玉工業大学の学生主体による「OKABE光の回廊プロジェクト」に所属するメンバーで、ふかや市商工会青年部の協力を得ながら、毎年冬に、駅前にキラッキラの彩りを添え続けている。

同大 工学部生命環境化学科4年の沖山祐太さんは、このプロジェクトリーダーを務めるキーマン。「実は僕、この岡部駅の近くで生まれ育って、ずっとこの地域に住み続けているひとりです」と明かした。

「地元であるこの地域に、何かできないかと思ってこのプロジェクトに参加した。埼工大の最寄り駅である岡部駅は当時、夜になると暗闇に包まれてさびしさや怖さがあるのも否めなかった」(沖山さん)

「そこで、大学で学ぶCG・電気回路・電子回路・プログラミングといったスキルを活かして、駅前ににぎわいと彩りを添えようと考えたのがこのプロジェクトのきっかけ。いまこうして大勢の人たちの笑顔を見ていると、ホッとする」(沖山さん)

埼玉工業大学の学生が自主的に取り組むプロジェクト

点灯式には、深谷市 小島進市長をはじめ、埼玉工業大学 内山俊一学長、商工会幹部たちも参列。

「3、2、1」とカウントダウンして3万球のLEDが灯ると、駆けつけた多くの地元の人たちが、拍手。

深谷市立岡部中学校 吹奏楽部の演奏が始まり、小さな高崎線の駅前が、笑顔と灯りでキラキラ輝く。

点灯式に参加した同大 松川聖業理事長は、OKABE光の回廊プロジェクトについてこう語っていた。

「学生たちの自主性や創造性を発揮させるために立ち上げた『学生プロジェクト』のひとつで、地元の団体と産学連携し活動を続けている。OKABE光の回廊プロジェクトは、その最も歴史ある取り組み。この日のために、1年間、企画や交渉を重ねてきているので、大勢の地元の人たちのよろこんでいる姿を見て、1年の苦労が報われていると思う」(松川理事長)

―――いつもはまっ暗の岡部駅。小学生2年の男子を連れたママは、「このイルミネーションが灯ると、岡部駅に冬がきたなって感じる。地元の人たちみんなに会える機会をくれてうれしい」と話していた。

埼玉工業大学とふかや市商工会による岡部駅前イルミネーションは、2018年1月31日まで、16~22時に点灯している。