そんなに楽しいか……(笑)。

いま走る電車の先頭から、2両目の車両に乗ってて、思わず、なにかがゆるんだ―――。

先頭でクラクションがプァンと鳴ったと思ったら、こちらに手を振るバスケ男子が車窓に映った。

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タイミングをみても、フェンスの向こうで手を振る大学生らしき男たちの表情をみても、警笛じゃない。

車窓から彼らをずーっと追っていくと、視界に消えるあたりでハイタッチしてる。

クラクションを鳴らしてくれることを賭けたのか、運転士のギャグか、わからないけど、うまくいったみたい。

そのシーンを見て、思い出した。

国鉄時代の機関区に入り込んで、電機機関車にカメラをむけたとき。

誰にもバレてないと思って、必死にシャッターを切ったのに……。ファインダーのむこうで、前照灯がファッと灯った。

スジからみると、まだ出発時刻からは、ほどとおい。

やばい怖いって思って、背なかを丸めて現場を離れると、そのランプがすスッと、消える。

線路脇から、出発までじーっと待っていると、その列車の機関士は、信号の合図どおりにピュッと小さく打って、ゆっくり出ていく……。

いまもむかしもみらいも、変わらない―――。きょう、西武電車のなかでであった光景は、動かす人と、かたわらで手をふる人の、変わらない、光景だった。