読鉄全書 池内紀・松本典久 編 東京書籍【鉄の本棚 23】その27

2019.07.03

第1部「喜望峰からヴィクトリアの滝へ セシル・ローズの足跡を追って鉄道で旅する」(2017年)で登場した土屋守さんが二度目の登場。

「油断もスキもない列車」(1994年)です。

英国の鉄道について、ということは土屋さんが英国に住んでいた1987年から1993年の話。一般的にも「時刻表通りになんて走っちゃいない」というので世界的に有名な英国の鉄道です。

ダイヤ改正の度に「どうせ時刻表とは無関係に運行しているんだから」と時刻表無用論が真面目に取り沙汰されるんだそうです。

実際に土屋さんが体験した英国鉄道の珍事。

1つ目。

チャリング・クロス駅発の列車に乗り込んで釣り雑誌を眺めていました。10分15分は当たり前なので気にしませんが、流石に発車時刻を30分過ぎても発車しないので不安になった頃。

「運転手が行方不明です」という駅の放送・・・「あ、パブにいました、もうすぐ発車します。」

車内は爆笑。同僚に連れられた運転士が先頭車両に向かいます。ギクシャクと車両が動き始めたと思ったら列車が停止してしまいました。しばらくして駅の放送が、まるで当然のことの様に

「お知らせいたします。この列車はただ今キャンセルされました。」

要は、運転士が酔っぱらいすぎて列車の運転が不可能だったのです。

2つ目。

同じくチャリング・クロス駅発の列車に乗って、日本から届いた推理小説を読み耽っていた土屋さん、30分ほど走って、ふと本から眼をあげると車窓の風景がいつもと違うのです。程なく列車は駅でも信号場でもない場所で停止してしまいます。そして徐に反対方向に走り始めたのです。

出発点のチャリング・クロス駅に戻る途中のジャンクションで三度方向を変えて、列車は予定通りの線を走り始めたとのことです。

時刻表通りに列車は走ったためしはなかったが(そんなことが何になるというのだ!)、駅のアナウンスはユーモアがあって気がきいているし、それよりも何よりも、どんなことがあっても慌てず騒がず、まるで何ごともなかったかのように悠然としているイギリス人が大好きであった。〈中略〉なにしろ列車は決まった道をいつも走るとは限らず、油断もスキもなかったのだから。本書 p.422

30年程前の出来事ですが、日本の正確無比を誇る鉄道とは全く違いますね。う〜ん。

(写真・記事/住田至朗)

TAGS 新聞/書籍/雑誌


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