読鉄全書 池内紀・松本典久 編 東京書籍【鉄の本棚 23】その26

2019.07.02

沢木耕太郎「娼婦たちと野郎ども」(1986年)

沢木耕太郎さん、初期の『若き実力者たち』と『敗れざる者たち』を文庫で読んで、以降の作品は『キャパの十字架』以外読んでいません。そーいうワケで久しぶりの沢木さんです。そうそう『目撃者ー近藤紘一全軌跡1971〜1986』は好きな本ですが、沢木さんの編集でした。

1986年(昭和61年)新潮社から刊行された『深夜特急』三部作は、横浜から香港、マレーシア、インドそしてロンドンまでの旅の紀行。低予算なので主にバスを使っての移動ですが「娼婦たちと野郎ども」は数少ない鉄道での移動部分。

バンコクの中央駅からタイ、マレーシアを経てシンガポールまで走る国際列車があります。

沢木さんは「途中の田舎町で下車して何日か過ごしてみたい」と普通列車のチケットを買いました。出発まで時間があったので駅前マーケットで食事します。当初はボラれたと思っていたら予想外に安かったので少年にチップを渡そうとしましたが毅然と断られて大いに気をよくします。

乗り込んだ車両は木の椅子が満員で、親切な若い女子が無理矢理詰めて席をつくって太ったおばさんを座らせます。平然と坐るおばさん、席を譲った若い女性が剰りに窮屈そうなので沢木さんは30分ユックリ坐っていなさいと言って、所在ないので食堂車に行きました。

混雑した食堂車で沢木さんは親切なタイ人のテーブルで一緒に食事をして、新たな目的地を勧められます。席に戻ると30分程坐らせてあげるということが伝わっていなかった様で、結局沢木さんは席を譲ったことになってしまいました。

茫然と立っていたら親切な若者が席を詰めて坐らせてくれました。切符を買った駅が彼等の下車駅だったので仲良くなった彼等と深更の駅で降ります。野宿しか寝る手段がなさそうで、困った沢木さんに若者たちが安いホテルを紹介してくれました。

翌朝、ホテルの隣室に病気の子連れ娼婦がいて盛んにモーションをかけられて沢木さんは困惑しますが、昨夜の若者が来たので助かりました。次の目的地に向けて出発します。

昨日と一変してガラガラの鉄道で沢木さんは持参した岩波の中国詩人選を読みます。これが何と李賀。鬼才です。李賀の詩は難しいんですよね。

(写真・記事/住田至朗)

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