東京と大阪を2時間半で結ぶ日本の大動脈――東海道新幹線。

この東海道新幹線まわりは、地上も上空も競合路線がひしめきあう激戦ルートのひとつ。

空の便は、東京羽田と大阪伊丹を1時間10分で結ぶ国内外のレガシーキャリア路線が片道50便以上あり、さらに東京成田と関西国際空港を1時間40分で結ぶ便はジェットスターやピーチアビエーションなどのLCCを含めて片道15便以上が飛んでいる。

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また東名道を経由する東京~大阪 高速バスも昼行・夜行の両方で走っている。高速バスの所要時間はおおむね10時間。いっぽうで好き好んで自らクルマを操って東阪間を往復する人もいる。

出張や旅行、帰省、個人にグループ、ファミリーと、新幹線の使いみちや誰と乗るかなどは千差万別・十人十色。では、この東京と大阪の間を行き来する経営者や実業家といったビジネスのフロントランナーは、東京~大阪をどう移動し、どう過ごしているか。

グリーン車の窓側を選び、ブラインドを閉める

新幹線のぞみには大阪寄りに自由席、中央寄りにグリーン車、そして指定席がある。ビジネスキーマンは定例的な出張で、どのクラスを選ぶか。「ぼくももちろん、東京と大阪の間は新幹線を利用します」と話すのは、大阪に本社を構え、東京のほか各地を飛び回る実業家・嶋村吉洋氏。

「ぼくはいつもグリーン車を選びます。グリーン車の場合、事前に予約しなくても、だいたい席が空いてるから、急な出張や帰阪でもゆとりをもって移動できる」

「また、となりの席も空いていることが多く、通路を行き来する人も少ないうえ、みな静かに過ごしているので、東京と大阪の間の2時間30分をリラックスして自分らしく過ごせます」

また、東海道新幹線は富士山を愛でる山側と、駿河湾がみえる海側がある。グリーン車を選ぶ嶋村氏は、山側2列・海側2列ある席のどこを選ぶか。

「山側や海側というこだわりはありませんが、窓側の席を選びます。通路側が埋まるような混雑しているときは、あえて通路側を選ぶときもある。急な電話連絡などで、すぐに通路を抜けてデッキへ移動できるから」

ここに嶋村氏のルーティーンがひとつ。車窓を眺めるために窓側を選ぶのではなく、「通路側に人がいない」「通路を行き来する人と干渉しない」といった理由で、「2時間半を自分らしくリラックスしながら集中する時間として使える」という。

「だから、集中するためにいつも座ったらすぐに窓のブラインドを閉めます。これがいつも習慣化していますね。ブラインドを閉めてから、仕事や読書、仮眠に入る。仕事も、長期的なビジョンを描くこともあれば、下車してすぐに始まる仕事の準備もあります」(嶋村氏)

リニア開業後は「1日になんども往復するかも」

また、グリーン車に乗って東京と大阪を行き来する嶋村氏は、「グリーン車で移動していると、気になっている経営者やビジネスキーマン、アスリートなどに遭遇することも多く、車内での出会いからビジネスチャンスがいろいろ生まれることもあります」ともいう。

また、嶋村氏と交流のあるビジネスキーマンたちのなかでも、「気になるルーティーンがある」という。

「たとえば、ノイズキャンセル機能などがつく防音ヘッドホンをつけて、仕事に集中する人もいます。また、車内で瞑想する人や、治療家といっしょに新幹線に乗り込み、移動中に施術を受ける人もいます」

―――東海道新幹線 東京~大阪 のグリーン車は、普通車指定席や自由席では見かけないトレンドがあった。最後に「リニア中央新幹線が東京~大阪で開業すると、どんな移動シーンを想像する?」と聞くと、嶋村氏からこんなことばが返ってきた。

「デジタルテクノロジーがどこまで進化しても、アナログな人と人とのコミュニケーションは存在し続けるだろうし、コミュニケーションのさらなる向上も重要だと思っています」

「だから、リニア中央新幹線 東京~大阪が開業して移動時間が短くなると、こんどは地下鉄で街を移動するような感覚で、東京~大阪を1日になんども往復する……そんな時代がもうすぐやってくるかも」

写真 記事:鉄道チャンネル編集部