三セク鉄道は昨年度、40社中33社が赤字 自然災害とコロナのダブルパンチ

2020.08.16

取材で訪れた三セク鉄道で印象に残るのが2018年11月訪問の南阿蘇鉄道。熊本地震で一部が運休中で、運転区間は高森―中松間だけ。一般列車のほか、観光利用を意識したトロッコ列車が走ります。

鉄道事業者の本年度第1四半期決算が相次いでまとまり、各社軒並み大きな赤字を計上しています。通勤・通学客という基礎収入のある鉄道事業は手堅い商売の代表格とされてきましたが、新型コロナはそんな常識を粉砕してしまいました。それでは、大手以上に影響が深刻そうな中小鉄道はどうなっているのか。ちょうど、第三セクター鉄道の昨年度の輸送実績と経営成績がまとまったので概要を紹介しましょう。

全体の輸送人員は東京メトロの30分の1

三セク鉄道の経営状況を集計したのは第三セクター等鉄道協議会(三セク協)。本サイトでも紹介しましたが最近、旅行会社と共催で鉄道版の四国八十八ケ所巡り「鉄印帳の旅」を始めて、話題を呼びました。三セク鉄道の成り立ちは改めて紹介しますが、三陸鉄道、いすみ鉄道、平成筑豊鉄道と社名を挙げれば、鉄道好きの方ならイメージしていただけるでしょう。

三セク協会員は全国40社。国鉄の特定地方交通線を引き継いだローカル鉄道が34社、整備新幹線開業でJRから経営分離された並行在来線を運営するのが6社で、こちらは道南いさりび鉄道、肥薩おれんじ鉄道などです。

会員39社合計の年間輸送人員は9508万人で、前年度に比べ実数117万人、率1.2%の減少。会員数が40社なのに実績が1社少ないのは、北近畿タンゴ鉄道の特殊事情。施設保有と列車運行を分ける経営の上下分離で、運行をWILLER TRAINS(京都丹後鉄道)に移管したため、輸送実績はありません。

輸送人員9500万人といわれてもピンときませんが、東京メトロの昨年度輸送人員は27億6500万人。三セクは39社が束になってもメトロのほぼ30分の1に過ぎません。そもそも三セクで輸送人員が1000万人超なのは愛知環状鉄道、しなの鉄道、あいの風とやま鉄道の3社だけです。

三セク最長の三鉄は36万人増

最初にお断りすべきでしたが、三セクで四半期決算を公表する鉄道はないので、本コラムでコロナに明確な影響を受けたといえるのは年度末3月の1カ月間だけ。昨年度は、昨秋の2つの台風をはじめ自然災害のマイナス要因も大きかったといえます。

会社別の輸送人員は増加16社、減少23社。最も大きく増えたのは愛知環状鉄道で、前年度比37万人増。沿線工場の通勤モーダルシフト(マイカー通勤をやめて、公共交通機関で出勤する会社ぐるみの活動です)に加え、東海圏の鉄道会社と共同のウォーキングイベントが成果を挙げました。

注目の鉄道では、三陸鉄道は36万人増の91万人。昨年3月にJR山田線が移管され、総延長161kmと日本最長の三セク鉄道が誕生して底上げにつながりました。三鉄は観光列車の運転などで、〝あまちゃんブーム〟を維持します。

4年前の熊本地震で区間運転が続く南阿蘇鉄道は利用6万人ながら、前年度に比べて5000人増。最近、「2021年夏にも全線復旧」のニュースが流れました。同じ熊本県のくま川鉄道は先の7月豪雨で橋梁が流失。本サイトでは8月6日、「くま川鉄道復旧祈念きっぷセット」のニュースを報じました。追加情報で、同じ三セクの明知鉄道でもきっぷの取り扱いを始めたそうです。

※輸送人員は1万人単位で四捨五入。南阿蘇鉄道だけ1000人単位まで表記しました。

全社合計で76億円の経常赤字

ここからは決算に移ります。北近畿タンゴ鉄道を加えた、全会員40社合計の全体経常赤字額は76億4200万円で、前年度の68億7300万円に比べ8億円弱悪化しました。これ以上の分析はありませんが、自然災害とコロナが主なマイナス要因といえます。ちなみにコロナの本年度、第1四半期に100億円以上の赤字を出した企業も珍しくありません。

黒字7社、赤字33社。前年度に比べ黒字が1社減り、その分赤字会社が増えました。最も多額の黒字を計上したのはIRいしかわ鉄道の2億7400万円。智頭急行の2億1800万円が続きます。黒字1億円以上は2社だけ。ほかに黒字なのは愛知環状鉄道、信楽高原鐵道、若桜鉄道、甘木鉄道、しなの鉄道の5社です。

収支改善幅が最大だったのはえちごトキめき鉄道の1億9000万円(経常赤字は2019年度5億1600万円、2018年度7億700万円)。ほかに秋田内陸縦貫鉄道、由利高原鉄道、山形鉄道、のと鉄道、明知鉄道、北近畿タンゴ鉄道、井原鉄道、錦川鉄道、阿佐海岸鉄道、平成筑豊鉄道、松浦鉄道、くま川鉄道、あいの風とやま鉄道の13社が赤字幅を減らしました。

コロナの本年度、各社の経営はますます厳しく、施設や車両の維持・更新費のほか、非電化鉄道では乱高下する燃油価格が経営を圧迫します。国は経営の上下分離を再生の方策とします。三セク協会員では三鉄、若桜鉄道、信楽高原鐵道、北近畿タンゴ鉄道、山形鉄道が分離済み。北近畿タンゴ鉄道は自社で線路を保有し、運営を京都丹後鉄道に移管。それ以外の4社は地元が線路保有、各鉄道会社は列車運行や営業に専念しています。

新幹線や都市鉄道と共に、地方圏を走る三セク鉄道もまた、日本の鉄道を象徴するシーンの一つです。本欄では、今後も具体的に鉄道の魅力を紹介したいと思います。

文/写真:上里夏生


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