名前は路面電車でも実態は新しい鉄道!! 2026年の〝鉄初め〟はライトライン完乗【コラム】

鉄道ファン目線で新年を展望すれば、日本初の荷物専用新幹線登場(3月23日予定、JR東日本)、特急「しなの」用385系量産先行車新製(2026年春予定、JR東海)、JR山陽線山口エリアに新型車両「Kizashi(きざし)」導入(2026年度以降、JR西日本)と、新型車両の話題が目白押しです。
業界全体では、鉄道各社は旅客サービスを一段と重視。利用客を目的地に運ぶだけでなく、乗車中をいかに快適に楽しく過ごしてもらうかに知恵を絞ります。
そんな2026年の書き初めならぬ〝鉄初め(てつぞめ)〟は宇都宮ライトレールへ。2023年8月に開業したライトライン(愛称名。宇都宮東口~芳賀・高根沢工業団地14.6キロ)に、遅まきながら初乗車しました。
今回は、快走する日本初の新線LRT(次世代型路面電車)をルポ。賛否相半ばした新線を誕生させた原動力から「ライトラインは西へ」がキャッチフレーズの西進構想まで、ライトラインの過去、現在、未来をお届けします。
(本コラムは2026年1月2日の現地ルポとともに、2025年6月に交通環境整備ネットワークが開催した「地域鉄道フォーラム2025」での東智徳宇都宮市副市長〈当時〉と宇都宮浄人関西大学経済学部教授の基調講演を再構成しました)
12分ヘッドダイヤ、ICカードが基本
東京23区のほぼ3分の2に相当する417平方キロの市域に人口51万人。栃木県都・宇都宮市は茨城県水戸(27万人)、群馬県高崎(37万人)、同前橋(33万人)の各市をしのぐ、北関東3県最大規模の都市です。
まちの玄関口がJR宇都宮駅。鉄道は東北新幹線と在来線で、在来線は宇都宮線(東北線)から日光線が分岐します。駅は西側に高架の新幹線、東側の地平(地上)に在来線が並びます。
駅の東西は自由通路で結ばれ、最も東寄りを発着するのがライトラインです。始発の宇都宮駅東口(ライトラインは軌道法に基づく路面電車で、正式名は宇都宮駅東口停留所です)は島式ホーム1面2線。日中時間帯のダイヤは12分ヘッドで、ストレスなく快適に利用できます。
沿線は宇都宮市と栃木県芳賀町。乗車は交通系ICカード・totra(トトラ)が基本。発行枚数の多いSuicaやPASMOももちろん使えます。路線バスと同じく、乗降車時それぞれドア横の読み取り機にタッチ。現金の場合、最前部の運賃箱利用ですが、カードならどのドアでも乗降できる信用乗車方式です。
鉄道と同等の施設を走る路面電車
筆者は往路、宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地まで全線に乗車。帰路は撮影しながら2留所分を戻り、車両基地のある平石で途中下車、宇都宮駅東口に戻りました。
宇都宮駅東口を発車した超低床のHU300形電車、90度直角に曲がって東進します。
かつての路面電車、道路上をクルマと併走するイメージでした。当時は〝道路渋滞の犯人〟と目されましたが、21世紀に入って風向きが変わりました。
建設費は地下鉄やモノレールに比べ割安。人と環境にやさしい移動手段として再注目されます。潮目を変えたきっかけは、JR富山港線を転用して2006年に開業した富山ライトレールです。
既設線利用の富山ライトレールに対し、全線が新線のライトライン。始発の宇都宮東口から宇都宮大学陽東キャンパスまでは、ほぼ4車線の道路上です。中央2車線分がライトラインの軌道です。
陽東キャンパス以東は専用軌道と併用軌道が混在します。幹線道路をまたぐクロスポイントは、基本的に平面交差でなく鉄道のような立体交差。この点、LRTは鉄道施設を走る路面電車という印象を受けました。
EV公用車を週末に無料貸し出し
沿線の宇都宮市と芳賀町が目指すのは、住民や沿線で働く人たちの移動手段変革。具体的には、平石、清原地区市民センター前など4停留所最寄りに無料駐車場を設け、パークアンドライトによるマイカーからLRTへのモーダルシフトをうながします。

現地で見つけたシフト策。芳賀町は、公用車の電気自動車(EV)を日曜日や休日に無料貸し出し、ライトラインから乗り継ぎ利用してもらいます。
宇都宮市のデータなので若干手前みそかもしれませんが、総人口が減少する宇都宮市にあって、ライトライン沿線は増加。沿線では1日当たりマイカー走行量が5000台規模で減少しつつあるそう。目に見えない効能では、シニア層の外出機会が増えて年間10億円超レベルで医療費抑制が期待できます。
当初は新交通システムのはずだった
ここでライトライン前史。沿線の清原工業団地、戦時中まで旧日本陸軍の名機・隼(はやぶさ)などを送り出した中島飛行機の工場でした。
1974年から栃木県と宇都宮市が共同で工業団地を造成して分譲。従業員1万3000人規模(2025年8月時点)のものづくり・研究拠点が誕生しました。
当初は通勤手段として県が新交通システムを整備するプランでしたが、進展のないまま20年以上経過。新交通に代わるLRTは、推進派と反対派が割れ、首長選での争点になりました。2004年の知事選と市長選ではともに推進派が当選、機運が高まりました。
2018年6月には施設整備に着手、当初予定からは遅れたものの、2023年8月26日に開業を迎えました。
「ライトラインは西へ」
ライトラインに未来を告げる西進構想。キャッチフレーズは「ライトラインは西へ」。1972年3月、国鉄ダイヤ改正の「ひかりは西へ」を思い起こすベテランファンがいらっしゃるかもしれません。
宇都宮市が2025年10月に公表したプランでは、延伸区間は宇都宮駅東口~教育会館前(仮称)4.9キロ。開業予定時期2036年3月、概算工事費約770億円(税込み)。予定停留所は起点の宇都宮駅東口を含め13カ所(12カ所新設)、東武宇都宮駅前(仮称)で東武宇都宮線に接続します。

最後に、完乗で感じたことを繰り返せば「ライトライン、名目は(次世代型)路面電車でも実態は新しい鉄道」。十分な道路幅が確保できないと道路交通との共存は難しいといった課題は否定できませんが、21世紀型の新しい都市の移動手段として後に続く都市に現れてほしいと思いました。
記事:上里夏生
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