【鉄ch日報】長井の町と馬肉の話【20200920】
昨日はあのスーツ交通さんが出演した『99人の壁』放送日、今日はことでんのレトロ電車運転日。4連休前半も間もなく終わり、後半戦に入ります。いかがお過ごしでしょうか。バッシーです。
連休初日、やまがたアルカディア観光局の芳賀さんから嬉しいご連絡をいただきました。以前もご紹介しましたが、山形の三セク・フラワー長井線と一般社団法人やまがたアルカディア観光局が組み、9月19日にZoomツアーが開催されたのです。こういったツアーを三セクが実施するのは珍しい取り組みでしたので、第2弾、第3弾と続けばいいなぁ……と考えています。
今日はこの時の取材のこぼれ話でも。
取材記事は「鉄道チャンネル」に掲載するものなので、フラワー長井線以外の話は極力カットしていますが、実際には長井の町を中心に色々な場所をめぐっています。たとえば旧長井小学校第一校舎。昭和の木造校舎をリノベしたもので、現在では市民の交流拠点になっています。奥まで見通せる長い廊下や階段を見て「コスプレでここ借りて撮影すると面白そうじゃないですか?」って言ってみたり、フラワー長井線のWebサイトを作った方にコーヒーを淹れてもらったり。なぜそこで働いているのかは分かりませんが……。
あとは「もっちぃ駅長」のいる宮内駅へ行ってみたり。フラワー長井線の鉄道むすめ「鮎貝りんご」がうさぎを抱えているのは「もっちぃ駅長」由来なんですね。うさぎといえば宮内駅は熊野大社への最寄り駅でもあり、ここには三羽のうさぎの伝説があります。本殿裏にはうさぎが三羽隠し彫りされており、全て見つけたら願いが叶うという言い伝えがあるそうな。自分は一羽しか見つけられませんでした。
取材中に特に印象に残ったのは食べ物の話でした。たとえば山形といえば有名なのは芋煮ですが、山形名物である玉こんにゃくは入れずに四角いこんにゃくをちぎって入れるのだそうです。これ本当なんだろうか、と山形出身の人にそれとなく探りを入れてみたところ、おおむね間違いないと。ただ別の方からは「玉こんにゃくをそのまま入れる地域もある」とのお話もいただき、それじゃあ「山形の芋煮には四角いこんにゃくをちぎって入れるそうです」とは書けませんな……ということでお蔵入り。裏取りは大事です。
また芳賀さん曰く長井は「なんでも冷やす町」らしく、ラーメンも冷やします。冷やし中華ではなく冷やしラーメン。で、お店によっては馬肉を入れる。この冷やし馬肉ラーメンが美味い。記事では触れませんでしたが、今回のツアーで立ち寄ったお店の他にも、長井には有名な馬肉ラーメンのお店が少なくともあと2店舗はあるそうで。よそではなかなか口にできない味なのでいつかは巡ってみたいところです。
でもどうして「馬肉」なのか。これは長井という町の成り立ちを押さえると分かりやすい。長井は最上川の舟運で栄えた町――「山奥の港町」、交通の要所です。荷物を運ぶには水上では船を使えば良いのですが、陸上では荷馬が必要になる。そうした事情から長井は馬と共に生き、馬肉を食べる文化が育ったそうな。この辺の話は山形県のホームページに詳しく書いてあります。ちなみに長井の馬肉は「赤身肉」がメインだそうです。
でも個人的に馬肉で思い出すのは熊本なんですね。取材のついでに入った居酒屋で「なんか美味しいものはないですかね」と聞くと「馬刺しがいいですよ」とおすすめされるわけです。でも高いからなぁ……と躊躇していたら小声で「メニューには載せていませんが、このお値段で赤身とたてがみの二点盛りはいかがですか?」とちょっとお安い値段でご提示いただいて、そこまでお気遣いいただいたんなら応えるしかねえな、と。
赤身肉とたてがみを重ねて薬味を巻き、熊本の「甘い醤油」につけていただくとこれが美味い。ハチロクのゲームにも登場した「だご汁」と合わせていただくともう最高です。豊肥本線も全通しましたし、長井と熊本でそれぞれ馬刺しをいただいて違いを楽しむというのもいいんじゃないでしょうか。
文/写真:一橋正浩
※2020年9月21日 写真を追加しました。