【前回】 今乗っておきたい「室蘭本線・岩見沢~沼ノ端」 駅周辺を楽しむ旅(2)
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JR室蘭本線は、函館本線・長万部~岩見沢までの本線211.0㎞と、東室蘭~室蘭まで7.0kmの支線で構成する路線です。沼ノ端~長万部及び沼ノ端~室蘭は特急が走るなど、札幌圏と道央・道南を結ぶ幹線として位置づけられていますが、岩見沢~沼ノ端は本数が少なく、ローカル線のイメージを色濃く残しています。のどかな沿線の情景を全6回に分けて紹介します。

町民の交流空間 「栗山駅」

町名はアイヌ語のヤム・ニ・ウシ(栗の木の繁茂しているところ)に由来

栗山駅は1893年7月1日に、北海道炭礦鉄道の駅として開業しました。1926年10月14日に夕張鉄道が当駅から新夕張(後の夕張本町)を開業して接続駅になり、1930年11月3日には夕張鉄道が野幌から当駅を開業し、夕張鉄道線と室蘭本線の交叉点となるなど、鉄道の拠点と位置付けられた時代もありました。2000年12月にくりやまカルチャープラザ「Eki」と合築の新駅舎が竣工。 町民の交流空間として利用されています。

老舗造り酒屋でほろ酔い気分に

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栗山町は「産業の街」として知られ、農業のほか多様な工場が稼働しています。老舗企業も多いことから、毎年4月に「老舗まつり」が開催されています。中でも「小林酒造」は1878年創業の道内最古の酒蔵です。代表酒「北の錦」は、隣接する夕張の炭鉱員に愛されたことから「炭鉱街の銘酒」と呼ばれ親しまれています。敷地内には記念館があり、様々なお酒が購入できるほか、試飲も行っています。ほろ酔い気分になれるのも鉄道の旅の楽しみのひとつ。敷地内には美味しいそばを食べさせてくれる店もあります。ぜひ訪れてみてください。

知る人ぞ知る観光の穴場の玄関口 「由仁駅」

複合的機能を備えた由仁駅

由仁町は人口5,000人に満たない小さな町です。地名はアイヌ語の「ユウンニ」(温泉があるところの意味)がなまったものといわれるとおり、町内には宿泊可能な温泉ホテルがあり、地元で採れた新鮮な素材を使った料理が提供されています。広大な敷地を誇る英国式庭園や果樹園もあり、1年を通して楽しめます。

由仁の素晴らしさをアピールする駅舎内

由仁町の玄関口である由仁駅は、1892年8月1日に北海道炭礦鉄道の駅として開業しました。第二次世界大戦中は軍の要請により、由仁駅から宇古川砂利採取場へ砂利専用線が敷設されていたこともありましたが1960年代に廃止。貨物や荷物の取り扱いもなくなり、室蘭線の旅客駅の一つとして役割を担っています。2007年の改築にともない由仁町ふれあい交流館を併設。町をPRする展示やパンフレットなどが置かれています。

駅を降りれば由仁の素晴らしさが伝わるはず

様々な魅力に溢れた由仁町ですが、知名度はいまひとつ。道内在住者でも正確に場所を言い当てられる人は少ないでしょう。列車の本数も少なく駅前も閑散としています。タクシーが一台、いつ来るかわからない客を待っていました。

偶然の発見が旅の醍醐味

駅前通りを進むと、商店が立ち並んでいました。地元では有名な老舗菓子店や、レアな玩具を扱う文房具店、ブラックミュージック好きな店主の居酒屋など個性的なお店がいっぱい。予期せぬ発見に宝物を見つけた気分でした。

文/写真:吉田匡和