渋沢栄一生誕の地、埼玉県深谷市。ここ深谷市にキャンパスを構える埼玉工業大学は、太陽光発電とレドックスフロー電池を組み合わせた電力需給システムを開発・構築し、1年間におよび実証実験。2020年3月から約3000時間の連続稼働を実現した。

レドックスフロー電池は、原理的に耐久性と安全性が高く、電力変動の大きい自然エネルギー用の蓄電池として適した特性を持ちあわせるのが特長。

埼玉工業大学では、再生可能エネルギー利用推進に向け、自然エネルギ ーの充放電に適した蓄電池として、レドックスフロー電池に着目。脱炭素時代に向けた同大学の教育・研究として実証実験を重ねてきた。

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今回は、同大学 工学部 生命環境化学科 環境計測化学研究室 松浦宏昭准教授の研究チームが、再生可能エネルギーを高い効率で利用可能なレドックスフロー電池を開発した。

レドックスフロー電池とは

レドックスフロー電池は、リチウムイオン電池とは異なる原理で、電池反応に関する部材の劣化がなく、充電や放電を繰り返しても長寿命。

不燃性の材料によって電池が構成され、爆発や発火といった現象が起こらないため、耐久性と安全性にも優れている。

またこの電池の容量は、電池本体(セルスタック)を大きくすることなく、電解液タンクに貯める電解液量を増やすだけで電池の大容量化ができる。

さらにこうした構造から、電力の変動の大きい自然エネルギー用の蓄電池として適している。

余分な電力をレドックスフロー電池に蓄電

埼玉工業大学で動き出した「太陽光発電とレドックスフロー電池を組み合わせた電力需給システム」の仕組みはこうだ。

まず太陽光パネルで発電した電力を、同大学内の「ものづくり研究センター」の館内照明用に給電すると同時に、余分な電力をレドックスフロー電池に蓄電する。

また、館内消費の必要量に対して太陽光の発電が不足している場合(曇りの日など)は、レドックスフロー電池から自動的に放電を開始し、太陽光発電の電力とあわせて館内照明に給電する。

さらに、太陽光発電の電力がない(夜間などの)場合は、電力会社からの供給電力で蓄電し、蓄電していた電気を放電して供給する。

再生可能エネルギーの有効活用と電力の自給自足が実現

実証実験では、1年間の気象サイクルによる太陽光パネルでの発電と、連動するレドックスフロー電池への蓄電、蓄電した電気を館内照明設備に給電するといった、実環境での動作特性データを取得。

とくに太陽光発電で余った電気を蓄電する稼働方式では、従来利用されていなかった電気を貯めて、夜間に使用する運用を実証できた点がポイント。

これにより、再生エネルギーの高効率活用を実現する蓄電池の実用化に向けた技術が検証でき、レドックスフロー電池のさらなる性能向上に向けた課題とその改善手法も明確になったという。

このレドックスフロー電池の実用化で、再生可能エネルギーの有効活用と電力の自給自足が実現。また地震や台風などの自然災害による停電対策として、自治体庁舎や病院の非常用電源として展開もできる。

関連企業や研究機関と共同研究を積極展開、学生の教材にも

埼玉工業大学は、高効率で安定的な自然エネルギーによる発電システムや、高い安定性と高効率化を実現する蓄電システムの研究開発を強化する。

自然エネルギーを効率的に利用可能な蓄電池システム開発 の拡大を支援するために、オープンな研究施設である同大学の「ものづくり研究センター」を拠点とし、関連企業や研究機関との共同研究を積極的に展開していく構え。

また、環境問題の啓発・啓蒙に向けた地域社会貢献活動にむけた教材としても活用していき、学生教育にもつなげていく方針。

「国・地域の政策やイノベーションの基盤となる科学的知見を創出し、『知の拠点』としての役割を果たすべく、産学官等との連携強化を通じてその機能や発信力を高める場『カーボン・ ニュートラル達成に貢献する大学等コアリション』に参画していく」(埼玉工業大学)

◆埼玉工業大学 生命環境化学科
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