しなの鉄道がファンドによる資金調達で導入を計画するSR1系電車

長野県のしなの鉄道と、東京に本社を置く投資会社・ミュージックセキュリティーズ(MS)が2021年1月からスタートさせた車両更新費用を得るためのファンド(資金調達)で、個人向けの募集が2021年5月27日、目標の3000万円を達成した。

地方鉄道の経営環境が厳しさを増す中、第三セクターのしなの鉄道は環境性能に優れた新型車両の導入経費の一部を、いわゆるクラウドファンディングで調達することを発案。沿線街づくりで関係を持つ三菱地所が仲介して、MSと共同のファンドを立ち上げた。ファンドは5000万円の調達目標を設定し、機関投資家や法人から2000万円(一口100万円)、個人から3000万円(一口5万円、ほかに手数料2000円)に区分した。

乗車しなくても鉄道を支えられる支援策にファンの関心は高く、関東甲信や東海エリアを中心に、開始から4ヵ月余で個人向けの目標を達成。資金は、半分を車両更新費に充当、残り半分は応募者に還元し、しなの鉄道でのイベント体験や沿線の特産品を進呈する。

ADVERTISEMENT

具体的な特典は、観光列車「ろくもん」の食事付きペア乗車プラン、「ろくもん」乗車と国鉄・JR東日本から移籍した115系電車の部品取り体験セットなどを予定する。

しなの鉄道とMSは引き続き、機関投資家や法人向けについても、経営者セミナーでの紹介などを通じて投資を呼び掛けている。

MSは社名通り、音楽家のサポートを目的として2001年に会社設立。最近は環境負荷軽減やエッセンシャルワーカー支援を主眼に、投資家と社会をつなぐ活動に力を入れる。

MSは、「しなの鉄道をモデルに、他の鉄道からの引き合いも来ており、地域公共交通の維持・再生を資金調達の立場から支援したい」とコメントしている。

文:上里夏生
(写真:しなの鉄道)