ちょっとチグハグな印象【木造駅舎カタログ】紀勢本線16/185 鵜殿駅
※2020年12月撮影
トップ画像は、紀勢本線鵜殿(うどの)駅。駅舎は駅が開業した1940年(昭和15年)12月の建造。前回の阿田和駅とほぼ同じ頃に建てられていますが規模もデザインも異なっています。JR東海さんらしくシングル屋根に葺き替えられていて、駅舎は古びた感じではありません。
紀勢本線JR東海管轄区域では最後、三重県でも最後の木造駅舎です。熊野川を渡れば和歌山県。新宮駅からは電化されたJR西日本「きのくに線」に入ります。
国道から分岐した県道35号線の北側に駅があって駅前には広場があります。
※2020年12月撮影
鵜殿駅は、1940年(昭和15年)国有鉄道紀勢西線の駅として開業。1959年(昭和34年)全通して線路名称改定で紀勢本線になってその所属駅になります。鵜殿駅からは熊野川左岸にある北越紀州製紙紀州工場への総延長3kmの専用線が分岐していました。製紙工場と東京貨物ターミナル駅間を貨物列車が往復していたのです。
1986年(昭和61年)駅が無人化された後も貨車入換作業を行うJR貨物職員が駅事務室を使用していました。1987年(昭和62年)国鉄分割民営化でJR東海とJR貨物に承継されます。
2013年(平成25年)製紙工場は輸送を海上船舶に切り替えたことで貨物列車運行は終了。2016年(平成28年)JR貨物の駅は廃止。製紙工場への専用線も撤去されました。
※2020年12月撮影
駅出入口。阿田和駅と同じなのは、旧字の「驛」が使われている点。でもこの駅名は左から表記されています。ちょっとチグハグな印象。
※2020年12月撮影
鵜殿駅は2006年(平成18年)紀宝町と合併して消滅した鵜殿村を代表する駅でした。
鵜殿村は、紀州製紙工場の企業城下町で、日本で一番面積が小さい(2.9平方キロ)、同時に一番人口密度の高い村でした。
ちなみに日本で最も面積の大きい村は、東京都23区(627.6平方キロ)よりも広い奈良県吉野郡の十津川村(672.4平方キロ)です。廃止されたJR北海道札沼線新十津川駅は、この十津川村出身者が入植して作った村が出発点でした。
鵜殿駅は正面の構内踏切を渡ると右側に島式ホームがあります。構内にはかつての貨物専用線などを撤去した跡地が残っていました。
鵜殿駅から次の木造駅舎に向かいますが、その前に新宮駅を表敬訪問しました。
細長いなぁ。
※2020年12月撮影
正面から見るとこんなに横長。
※2020年12月撮影
※鉄道の撮影は鉄道会社、鉄道利用者、関係者などのご厚意で撮らせていただいています。撮影は何よりも安全が最優先。あくまでも業務・利用の邪魔にならないように、そしていつも感謝の気持ちを持って撮影しています。
(写真・文章/住田至朗)