突然ですが、大井川鐵道のこのツイートを覚えておいででしょうか。2021年9月、同社が井川線のディーゼル機関車「DD20形」の運転体験ができるツアーを発表&募集したときのものです。

両国車両区の見学も行程に含めた「井川線好きにはたまらない特別なツアー」という触れ込みで、翌朝には申込が締め切られる人気ぶり。コロナ禍でみな外出を控えている状況にもかかわらず、です。なにしろ「DD20形」は大井川鐵道にしかない現役の営業用車両ですから、運転できる機会は自ずと限られます。

そんな「DD20形」の運転体験を含んだ大井川鐵道満喫ツアーを、2021年1月に旅行会社旅工房と大井川鐵道が協力して開催することになりました。ツアー名は【”鉄分たっぷり”大井川鐵道の旅】――今回の見所は「DD20形」だけではなく……

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・大井川鐵道の「全ての車両基地」を見学
・アプト式電気機関車「ED90」の着座体験
・冬季限定の臨時列車「星空列車」に乗車
・参加者限定の「鉄道放出品即売会」

と、大井川鐵道の魅力を体験&堪能できるコースに仕上がっています。

日本で初めてSLの動態保存を始めたこともあり、一般的には「定期的にSLが走る観光中心のローカル鉄道」といったイメージが強い大井川鐵道ですが、大手私鉄から買い入れた車両急こう配区間を上るための特殊な機関車など、実はSLを除いてもユニークな要素ばかり。

今回両社が企画したツアーは、そのような大井川鐵道の「SL以外の魅力」をほとんど網羅するような内容となっています。宿泊はもちろん大井川鐵道のツアーでおなじみ「川根温泉ホテル」。源泉かけ流しの内湯と炭酸泉の露天風呂が自慢のお宿で、ランチバイキングも評価が高い。温泉好きとしても見逃せません。

川根温泉ホテル イメージ
川根温泉ホテル客室(左) 露天風呂(右)

本記事では、ツアー内容に沿って大井川鐵道の魅力を解説していきたいと思います。

【”鉄分たっぷり”大井川鐵道の旅】ツアー詳細ページ

そもそも「DD20形」はどんな機関車なのか

DD20形機関車(左)と運転台(右)

大井川鐵道のDD20形とは、井川線(愛称:南アルプスあぷとライン)で活躍する全長8.7メートルの液体式ディーゼル機関車です。1982(昭和52)年から導入がはじまり、井川線の客車をけん引する動力車として、今なお全6両が活躍中。各車両には次のような愛称がついています。

DD201「ROTHORN」
DD202「IKAWA」
DD203「BRIENZ」
DD204「SUMATA」
DD205「AKAISHI」
DD206「HIJIRI」

大井川鐵道のDD20形にはそれぞれ愛称が付けられています。たとえばDD201は「ROT HORN」

DD20形といえば、国鉄より先に「カミンズ・エンジン」を採用した逸話が有名でしょう。同エンジンはアメリカのカミンズ社が設計したもので、DD20形を除けばJR東海のキハ85系特急列車などに採用されています。独特の力強いエンジン音や走行開始時の揺れなどは、今なお東海地方の一部の列車で体感できます。

また、よりパワーが必要な急こう配区間などを走行する際に、機関車(など)を2両以上連結して運転する「重連運転」も行われますが、DD20形は一人の運転士が複数の車両の動力を制御する「重連総括制御」を井川線で初めて採用しました。大井川鐵道の歴史において、技術的な面でもとても重要な機関車なのです。

ツアーでは、千頭駅構内でDD20形の運転体験が可能。所要時間は約8分間ほどですが、営業用の”本物”の機関車を運転できる貴重なチャンスとなっています。

※余談ですが、実は国鉄も大井川鐵道の車両とは異なる「DD20形ディーゼル機関車」を製造したことがありましたが、こちらは一時的に運用に就きましたが、量産が見送られ1号機・2号機ともに解体されています。

「ED90形」の運転台にも着座、車両基地見学なども……

ED90形

実をいうと井川線、もともとは電力会社の専用鉄道でした。1959年に大井川鐵道が引き継いでからは同社が旅客営業を行っていますが、今も鉄道資産を保有しているのは大井川鐵道ではなく電力会社です。

かつて長島ダムの建設に伴い、井川線は一部区間が水没。同区間の代わりに新路線を建設することになりましたが、ここで90パーミルの急こう配が生じることに。普通の機関車ではまともに上ることもできません。

これを解決するために導入されたのが、アプト式(ラック式鉄道の一種)ED90形機関車です。装備したラックの歯車をかみ合わせながら日本一の急こう配を上っていく光景は、井川線でしか見られません。

今回のツアーではアプト電気機関車ED90形を間近に見学できるほか、着座体験も可。これまたDD20形運転体験同様、非常にレアな機会となっています。

ED90形運転台

着座体験ができるのは大井川鉄道の「市代検車庫」ですが、今回のツアーでは他にも「新金谷車両区」「両国車両区」も見学できます。

「市代検車庫」ピットから台車を撮影
「新金谷車両区」他の鉄道会社から譲渡された鉄道車両の姿も。鉄道ファンの中には「他の会社で乗れなくなった車両に乗る・写真を撮るため大井川鐵道に行く」という方も
普段は入れない井川線車両基地「両国車両区」の見学も

「星空列車」で夜空を鑑賞、夜汽車の雰囲気を堪能し、旅の疲れは温泉で

大井川鐵道で冬季に運行する「星空列車」

大井川鐵道は毎年冬季に「星空列車」を運行しています。

沿線の川根本町は日本でも有数の「澄んだ星空」が見られる町として知られており、また星空列車が停車する秘境駅「奥大井湖上駅」は周囲に灯りがなく、天体観測にうってつけ。

長島ダム湖に浮かぶ奥大井湖上駅は、近年では恋人たちの聖地としても知られており、国内外を問わず高い人気を誇ります。2019年には世界各国の外国人を審査員とし、日本各地の文化や観光名所などに贈られる「クールジャパンアワード2019」を受賞したほど。

今シーズンは急行版として、2022年2月末までの土日計32日運転。井川線営業列車としては最長となる客車7両を連結して乗車定員を抑えることで、ソーシャルディスタンスにも配慮しました。

前述のED90形との連結・切り離しの様子

ツアーでは列車に専用ヘッドマークを掲出予定です。初日の夜に滅多に乗れない「夜汽車」・ロマンチックな星空・秘境駅を体験し、川根温泉ホテルでごゆっくり……魅力的な旅の疲れをその日の内にしっかり癒せる行程が組まれています。

川根温泉ホテル外観(夜)

気になるツアー行程や料金は?

【”鉄分たっぷり”大井川鐵道の旅】は大井川鐵道 新金谷駅を出発し、静岡県川根温泉へ宿泊する1泊2日のツアーです。

旅行代金は一人あたり58,000円(税込)で、出発地の新金谷駅までは参加者の自己負担になりますが、行程中の鉄道運賃および料金 ・行程中の見学および体験料金 ・ホテル宿泊代(1泊2食付き/1名1室利用) ・ホテルの入湯税や諸税 ・昼食(1日目と2日目) ・軽食(1日目のみ)全て諸々込みでのお値段となります。

↓↓↓ツアーの行程はコチラ↓↓↓

繰り返しになりますが、大井川鐵道と言えばSL!ということで蒸気機関車に乗車するツアーは数あれど、電気機関車や車両基地という「大井川鐵道の魅力を支える存在」に着目したツアーはなかなかお目にかかれません。これまで何度も大井川鐵道を訪れたという方にとっても、魅力を再発見できるツアーとなりそうです。

【”鉄分たっぷり”大井川鐵道の旅】ツアー詳細ページ