東京メトロ丸ノ内線・東西線・千代田線・半蔵門線、都営地下鉄三田線と、5路線の線路が地下で4辺で交差する巨大地下鉄ターミナル―――大手町。

この4路線に囲われた土地のなかに3棟あるビルのうち、最も背が高くて先端技術がいろいろ詰まったビルが、大手町タワー。

東京建物が「都市と自然の再生を実現」をコンセプトに手がけたこの大手町タワー1階「大手町の森」に、きょう6月9日から7月8日までの1か月間、メディアアーティスト落合陽一がつくりだしたメディアアート空間「nullの木漏れ日」が出現。

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未来的な光で神秘的に浮かび上がる都会の森に、落合陽一は「いちばんいい見方は、ただぼーっとながめること」という。

「最近、森に興味があって作品を置きたいと思っていた」

「デジタルネイチャー」(計算機自然)というビジョンで創作活動を続ける落合陽一は6月8日、大手町タワー1階「大手町の森」に登場。

「最近、森に興味があって作品を置きたいと思っていた」と話し、こう続けた。

「今回の作品は、ガラス容器にはさまれたところにLEDディスプレイを入れている。光ってるところがすごい薄い。東京建物がこの『大手町の森』に、コンピュータと自然の親和を創出する『デジタルネイチャー』を展開するということで、この『nullの木漏れ日』をつくってみた」

「森のなかにデジタルの素材が入ってくると、薄くて軽いデジタルは質量が少なくて済むから、いろいろつくりだせる。たとえば水。水は立てられないから、こうしたデジタルの薄い光のメディアアートで立ててみると、すごく気持ちがいい」(落合陽一)

この「nullの木漏れ日」、五感で都会の森を感じる空間ということで、音にも仕かけが。急に静かになると、いつもの日常の音が敏感に聞こえたりして、直下を行く東西線の足音も、かすかに聞こえてくるから不思議。

ちなみに大手町駅 東西線ホームは地下3階部分にあり、このホーム階層と地上との間の層に、大手町タワー「大手町の森」の人工地盤と雨水貯水槽があるイメージ。

生態系保全の継続、都心での緑地整備の重要性を発信する東京建物

またこの日、落合陽一とともに登場したのは、東京建物 小澤克人 取締役専務執行役員と東京建物ビルマネジメント第一部 関口洋祐氏。

この「大手町の森」をつくったことで、生態ネットワークの形成や、ヒートアイランド現象の緩和、水循環利用などが実現できたことを伝えた。

東京建物は、「大手町の森」の生態系保全の観点から、周辺緑地では実現できない、日陰が多い樹林環境という強みを伸ばした生態系保全を継続していく。

また、緑地と人とのコミュニケーションの観点から、都心での緑地整備の重要性の発信、生物多様性に興味・関心を持つきっかけづくりをめざしていくという。

「null」という言葉に込めた想い

落合陽一はなぜ、このメディアアートに「nullの木漏れ日」という作品名をつけたか。

「Null(ヌル)は、『何もない』とかいわれる言葉で、データが入ってないこと。仏教などでは『空』。データの向こうからやってくる空はなにかみたいなのを、頭で考えるよりは、座って眺めるほうがいい」(落合陽一)

「森とデジタルの可能性に、興味をもってきた。実は縄文時代になにかのヒントがあるんじゃないかっていま考えている」と伝える落合陽一の最新メディアアート「nullの木漏れ日」は、7月8日まで、大手町タワー1階「大手町の森」で展示中。

落合陽一がいうように、ただただぼーっと眺めてみて。