千葉県 菜の花畑を駆け抜ける小湊鉄道の気動車(写真:denkei / PIXTA)

『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』は、実在した競走馬をモチーフとした擬人化コンテンツ「ウマ娘」のTVアニメ。今期はキタサンブラック・サトノダイヤモンドのライバル関係を主軸とするストーリーとなっており、第9話「迫る熱に押されて」では有マ記念に続き2回目の激突となった春の天皇賞が描かれました。

その前半パートではライバルにして親友でもある二人が小旅行にお出かけ。「青春18きっぷ」がモデルと思われる「青春18万kmきっぷ」を使い、鉄道を乗り継いで東の方へと向かいます。

ここで登場した鉄道のモデルとなったのが、千葉県の「小湊鐵道」「いすみ鉄道」です。SNSのXでは熊谷俊人千葉県知事と両社の公式アカウントが言及し、ファンの間でも話題になったのは記憶に新しいところ。

ADVERTISEMENT

両社は千葉県の房総半島を走る鉄道で、小湊鐵道は西側の五井~上総中野駅間、いすみ鉄道は東側の上総中野~大原駅間を結んでいます。直通運転こそ行っていないものの「房総横断記念乗車券」なども発売されており、両社をまたいで利用したことのある鉄道・旅行ファンも多いのではないでしょうか。

今回はそんな千葉県の鉄道2社の見所を紹介します。

※2023年12月1日現在、9月の大雨による影響で、一部区間で鉄道に乗車できない可能性があります。小湊鐵道は全線復旧を果たしましたが、災害復旧の恒久対策工事の影響で平日は一部区間でバス代行(鉄道の代わりにバスを走らせます)。いすみ鉄道は現在も不通区間でバス代行を行いながら、年内の復旧を目指しています。もし聖地巡礼に訪れる際は、両社のホームページで最新の運行状況をご確認ください。

房総里山トロッコや五井機関区が魅力(小湊鐵道)

小湊鐵道のトロッコ列車(写真:yossanmy / PIXTA)

小湊鐵道といえばまず挙がるのが「房総里山トロッコ」です。かつて活躍した蒸気機関車を現代のクリーンディーゼル技術で再現したレトロな機関車で客車を牽引し、五井~養老渓谷間を片道2時間ほどで走ります。2015(平成27)年にサービスを開始して以来、小湊鐵道の観光列車として話題を呼びます。

房総里山トロッコは全車指定席、乗車日30日前~前日までWeb予約を受け付けます。ただし、運行シーズンは3月中旬~12月上旬頃で、2023年の運行は12月3日(日)が最終日です。乗車を検討される場合は、事前に小湊鐵道のホームページで詳細をご確認ください。関東から五井までのアクセスは、特急「さざなみ」やJR総武線、アクアライン高速バスなど。

鉄道ファンなら五井機関区もおススメ。こちらは五井駅構内にある車両基地で、キハ200形など小湊鐵道の車両が所属しています。見学会や撮影会などのイベントが開催されることもあるので、鉄道ファンは要チェック。

元JR東日本のキハ40も仲間入りしています(写真:村上暁彦 / PIXTA)

ウマ娘ファンにとって嬉しいのは、やはりキハ40でしょうか。小湊鐵道にいるのは東北地方で活躍した車両ですが、第1期アニメではJR北海道色のキハ40と思しき車両が登場しており、既視感を覚える方も多いのではないでしょうか。

筆者の個人的なおススメは「市原湖畔美術館」です。過去に小湊鐵道沿線で行われた「いちはらアート×ミックス」というアートイベントを取材した際に訪れたのですが、館内の展示もさることながら、千葉県一の貯水面積を誇る高滝湖周辺の景色そのものが美術品とも言える美しさでした。

市原湖畔美術館は小湊鐵道「高滝駅」から徒歩20分。写真は取材時に撮影したもの

房総を駆ける「菜の花ライン」(いすみ鉄道)

千葉県のいすみ鉄道(写真:K@zuTa / PIXTA)

房総半島の東側を走るいすみ鉄道といえば、何と言っても有名なのは「菜の花」です。毎年2月中旬から3月下旬が見頃で、この時期に沿線を訪れると満開の菜の花の中を黄色い列車が駆け抜けていきます。もちろん桜の季節も美しく、タイミング次第では桜と菜の花の共演を見ることもできます。

観光名所としては九十九里浜の最南端に位置する太東埼灯台も有名。太平洋を一望できる中型灯台で、最寄りはJR太東駅(徒歩で40分ほど)。いすみ鉄道の大原駅からはかなり距離が離れているため、歩いて訪れるには相当な脚力が必要です。

夕暮れ時の美しさは言うまでもありませんが、初日の出を見に行くのも良いでしょう。なお、日本で一番早く初陽の出が見られるのは、同じ千葉県の銚子半島最東端にある犬吠埼。こちらは千葉県のローカル鉄道「銚子電鉄」の犬吠駅が最寄り駅となっています。

鉄道ファンにおススメしたいスポットは、いすみ鉄道上総中川駅から徒歩30分の「ポッポの丘」でしょうか。様々な車両が保存されており、昭和や平成の時代に活躍した車両を見学することができます。最近では青森県八戸市にあった583系食堂車「サシ581」を移設するためのクラウドファンディングも行っており、受け入れの準備が着々と進んでいます。

いすみ鉄道といえば車内で食事を楽しめるレストラン列車「レストラン・キハ」も有名でしたが、残念ながら2022年9月で運行を終了してしまいました。なお、調理を担当していた池田シェフのお料理は、千葉県茂原市の「ペッシェアズーロ」というパスタ専門店でいただくことができます。余談ですが、いすみ鉄道国吉駅の近くには名馬「ライスシャワー」の名を冠したレストランもあるようです。

魅力たっぷりの千葉県の鉄道。アニメでキタサンブラック・サトノダイヤモンドが訪れたのは春の時期ですが、冬場も秘境駅の訪問など見所満載です。ただしJR線ではない小湊鐵道・いすみ鉄道では「青春18きっぷ」での乗車はできませんので、その点だけはご注意ください。

【関連リンク】