「千葉市の評価を揺るがす可能性」(神谷市長)

ここから、地域の反響です。JR千葉支社の発表後の2023年12月21日に熊谷俊人千葉県知事と神谷俊一千葉市長の定例会見があり、そろって京葉線のダイヤ改正に言及しました。お2人の会見は、動画投稿サイトで公開されています。

記者の質問に答える形で、神谷市長は「JRが京葉線の通勤時間帯の快速を全廃するということで、非常に驚いている。日々乗車している方の感想を聞きたいところで、私のところにも不満を訴える声が届いている。千葉市の評価を揺るがす可能性もある」と懸念を示しましました。

神谷市長のSNSには、「生活サイクルが変わってしまう」、「転職や引っ越しを考えなければいけない」といった市民の声が寄せられるそうです。

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熊谷千葉県知事も質問に答えて、「ホーム混雑が緩和されるなど、タイヤ改正にも良い面があることは認める。しかし、沿線の住民の生活や事業活動にマイナスがあると認識しており、今後JRに対して申し入れを行いたい」と発言しました。

「狙いや背景を丁寧に説明」(土澤JR千葉支社長)

地域の予想外の反発に、JR千葉支社は驚きを隠せない様子。22日の会見で、土澤壇執行役員・千葉支社長は「狙いや背景を丁寧に説明し、理解を求めたい」と発言しました。

報道を総合すると、快速廃止の背景はコロナ禍後の利用低迷。朝通勤時の通勤快速の利用は各停に比べて7割程度にとどまります。かつて上り通勤快速を最大4本運転した期間もありましたが利用は伸びず、2021年ダイヤ改正で現行2本に縮小しました。

一方で、夜間時間帯は通勤快速に帰宅客が集中。東京メトロ有楽町線や東京臨海高速鉄道りんかい線からの乗換客が乗車する、新木場駅で混雑が発生するといいます。

快速各停化の効果では、途中駅での快速通過待ちがなくなって、蘇我ー東京間が最大7分、平均2分短縮できるそうです。

改正まで時間がなく見直しは困難

京葉線の〝快速廃止問題〟は、2023年末まで続きます。自治体では、JR外房線沿線の一宮町の馬淵昌也町長が12月27日の会見で、「全く容認できない」と批判しました。

翌12月28日には、土澤JR千葉社長が神谷千葉市長に面会。神谷市長が再考を求めたのに対し、土澤支社長は「ダイヤ改正までの時間が短いので難しい。市側の指摘を踏まえて、何ができるのかを真剣に考えたい」と答えました。

表面化しにくいプラスの評価

2024・3新ダイヤは、JRグループの全国改正で、北陸新幹線の敦賀延伸開業が最大のトピックスです。一度決まったダイヤが簡単に変えられないことは、本サイトをご覧の皆さまならご存じでしょう。

「総論賛成、各論反対」は鉄道の世界の日常茶飯事。このまま「JR vs 沿線自治体」に問題が深刻化するのは、JR、自治体ともに望むところではないでしょう。

京葉線のダイヤ改正には、プラスの効果もあります。ネガティブな意見に比較するとどうしても表面化しにくいのですが、沿線住民には各停が増えて利用しやすくなると感じる人もいるはずです。

そうした声を集めて発信するとか、改正後に利用客アンケートを実施して、次のダイヤ改正に反映させるなど、JRと地域が歩み寄れる糸口はいくつもあるはずです。

記事:上里夏生