万博でデモ飛行も “空飛ぶクルマ”のSkyDriveにJR東日本・JR九州が出資、高輪拠点や別府–湯布院15分構想も! 鉄道事業者との連携を強化!
空飛ぶクルマは、電動化や自動化、垂直離着陸(VTOL)技術を融合することで、都市部から郊外まで安全かつ手軽に移動できる、持続可能な次世代の空の交通手段です。こうした中、空飛ぶクルマを開発するSkyDriveは、JR東日本、JR九州などから総額83億円の資金調達を実施。既に出資を行っている大阪メトロと近鉄グループホールディングスに続き、鉄道会社との資本業務提携をしました。別府–湯布院間の移動時間を15分に短縮する構想など、シームレスな移動サービスの実現を図るとしています。
設立と技術開発の歩み
「SKYDRIVE(SD-05型)」は最大3名が搭乗可能なeVTOLで、複数のプロペラによる垂直離着陸を実現、冗長化された二重系統設計や自動操縦支援機能を備え、都市部運用を想定した低騒音プロペラ設計が特徴。同社は既に国内外で380機を超えるプレオーダーを獲得したと発表しています。
同社は2018年7月に設立。創業当初からドローン運航技術を応用したeVTOL機体の研究開発に取り組み、20年には日本国内で初の有人公開飛行試験を成功させたとされています。その後、官民協議会の構成員として制度設計にも参画し、安全基準や環境基準の策定、バッテリー性能や騒音低減技術の検証を通じて技術基盤を着実に強化したといいます。
同社の福澤知浩代表取締役CEOは「既存の鉄道ネットワークとSkyDriveの次世代モビリティを融合させることで、陸空シームレスの移動価値を一層高められることを確信しています」と述べています。
24年3月、製造パートナーのスズキグループ工場で初号機の製造が開始され、25年2月、国土交通省航空局から耐空性・環境基準の適用基準が正式に発行され、証明計画策定フェーズへ移行しているといいます。
同年4月には大阪・関西万博会場でデモフライトが実施されました。高度は約5メートル、飛行時間は約4分間。パイロットは搭乗せず、自動制御とリモート操縦による安全運航となったといいます。
鉄道と空の融合へ
鉄道各社との連携実証では、大阪メトロ・近鉄グループホールディングスに加え、JR東日本およびJR九州が新たに資本業務提携先・出資者として今回の資金調達に参加。
三菱UFJ銀行がリード投資家を務め、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、大林組、関西電力、スズキ、豊田鐵工、日本発条など既存株主11社が参加しました。調達資金は開発人員の増強、地上試験インフラの拡充、バッテリー熱管理や騒音低減技術の高度化、自動操縦支援ソフトの改良、さらにはスズキ工場での量産準備や品質管理体制の構築にも一部が充てられる予定です。
JR東日本は、小岩井や高輪エリアでの導入を
JR東日本はその一環として、小岩井および高輪エリアにおいて地域特性を踏まえながら、新たなモビリティである「空飛ぶクルマ」の導入を、各事業者と連携して推進しています。2025年8月29日から31日まで、東京・高輪ゲートウェイ駅外のGateway Parkで「鉄道×空飛ぶクルマ」展示イベントを共同開催し、SD-05型と実寸大SD-03型モックアップを展示する予定です。

さらに、2026年春開業予定の「AZUMA FARM KOIWAI」では盛岡~ホテル間の送迎を検討し、観光振興と地域活性化の両立を目指す方針です。同社の喜㔟陽一代表取締役社長は、地域の抱える移動課題の解決につながる可能性を秘めているとしています。
JR九州は大分県内で「空飛ぶクルマ」運航をめざす
JR九州とは2024年7月に連携協定を結び、2025年2月には大分県と包括連携協定を締結。「空飛ぶクルマ」の事業化に向けて協力を強化し、大分県内で離発着場候補地の調査や住民ワークショップを実施。今後は商用サービス開始を目標に、自治体や地域住民と協力しながら実証計画の具体化や運用モデルの構築を進める方針です。

現在、別府と湯布院を結ぶ移動時間は鉄道では約60分、車では約40分かかりますが、空飛ぶクルマを利用すれば15分ほどに短縮できる見通しです。同社の古宮洋二代表取締役社長執行役員は「空飛ぶクルマは九州の豊かな観光資源を空から楽しむという新しい体験価値を提供するだけでなく、地域における日常の移動手段としての新たな可能性を追求するものであり、地域の発展に大いに寄与できると考えています」と述べました。
(画像:SkyDrive、JR東日本)
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