川崎市は、武蔵小杉エリアに隣接し市民にも親しまれている等々力緑地(中原区)を「市民が誇りをもてる場所」にするため、老朽化が進む施設を大規模に再編整備する計画を進めています。この計画の柱は、J1・川崎フロンターレの本拠地・等々力陸上競技場を、3万5千人規模の「球技専用スタジアム」に改修することです。改修によりピッチと観客席が近づき、国内有数の臨場感が生まれます。また、新アリーナや新陸上競技場が作られ、市民の日常に寄り添う広場や、日々の運動をサポートする施設やプールが整備されます。豪雨災害に備えた防災機能の強化も同時に進められ、総事業費を圧縮しつつ、2029年度末の完成を目指しています。

等々力緑地の再整備

等々力緑地

等々力緑地は、多摩川にほど近い総合公園で、スポーツ観戦や自然散策、レクリエーションの場として市民に親しまれています。”等々力陸上競技場(現・Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu)”は、フロンターレの本拠地として知られています。園内にはこのほか、高校野球や社会人野球で利用される”等々力球場”(2020年10月にリニューアルオープン済)や、現在のBリーグ川崎ブレイブサンダースの本拠地でもある多目的に活用できる”とどろきアリーナ”など、多彩な施設が整備されていますが、施設老朽化による様々な課題に対応するため、公演全体を再編しての整備が検討されています。

再編整備前・現在の「川崎とどろきパーク」

敷地内とどろきアリーナ隣にあった”川崎市市民ミュージアム”は、2019年の台風被害により閉館していましたが、多摩区の生田緑地に移転することが決定し、2025年10月から解体工事が始まる予定です。(新しい川崎市市民ミュージアムは、2032年春に生田緑地内でのオープンを目指しています。)

環境保全や予算縮小を目指し2025年8月に提示された計画の見直し案では、立体駐車場2カ所の設置を中止し、すべて平面駐車場に変更。多摩川北側に計画していた連絡橋や園内のレインガーデン整備も取りやめる案が示されています。総事業費は資材価格の高騰により約1232億円に増額されていましたが、この削減策によって約40億円の圧縮を見込んでいます。事業は2023年10月の旧市民ミュージアム解体工事を皮切りに着工し、2029年度末の完成を予定。完成した施設から順次供用を始め、運営に移行する見通しです。

再編整備後のイメージマスタープラン(2025年8月29日時点)

大規模スポーツ施設の刷新

等々力緑地の再編成整備計画の柱となるのは、大規模なスポーツ施設の刷新です。

3万5千人規模の「球技専用スタジアム」

現在のフロンターレの本拠地でもある等々力陸上競技場は、陸上トラックを廃止し「球技専用スタジアム」として改修され、観客席とピッチの距離を縮めて臨場感ある観戦環境の実現を目指します。メインスタンドは現位置として、サイド・バックスタンド及びフィールドを整備し、収容人員は現在の2万5千人規模から3万5千人規模への拡大を想定するとしています。

整備後の球技専用スタジアム イメージ

新 とどろきアリーナ

新しいとどろきアリーナについては、トップリーグのバレーボールやバスケットボールの試合に加え、コンサートやライブといった多様なイベントにも対応できるよう整備が進められているといいます。

整備後の とどろきアリーナ イメージ
新とどろきアリーナ内のイメージ

市民の日常に寄り添う「ウェルネスパーク」化

市民が日常的にスポーツを楽しめる施設や、賑わいと憩いを創出する広場も整備されます。

新陸上競技場とスポーツセンター・プール

そして、現在の等々力補助競技場のある場所には、新しい等々力陸上競技場が整備されます。市民のための陸上競技大会が開催できる市内唯一の施設として、第2種公認相当陸上競技場に改修され、収容人員は5千人以上、夜間照明がある設備に生まれかわる予定です。
また、市民が運動を楽しめるようなスポーツセンターが再整備され、屋内プールなどが新たな施設として導入され、テニスコートや屋外運動場も整備されます。

整備後の(新)等々力陸上競技場 、スポーツセンター イメージ
テニスコートやサッカー場・運動広場などのイメージ

広場の整備

その他、テニスコートの増設やストリートスポーツエリアの新設といった市民向け施設の充実が検討されており、広場として「みんなのはらっぱ」や、とどろきアリーナ跡地には「こもれびの森」という憩いの場所の整備が計画されています。

敷地内にはいくつかの広場が整備される予定です

自由提案施設(テナント)

民間からの提案を元に運営される自由提案施設(店舗など)は、今回の見直し案では、当初案の18棟から10棟に縮小されています。カフェやレストラン、物販店、温浴施設、マルシェ、サイクルポートなど様々なものが想定されますが、どんなお店になるのか期待が膨らみます。

自由提案施設のイメージ

「安心と安全」防災機能の強化、武蔵小杉エリアを水害から守る機能も

防災機能の強化を巡っては、園内には雨水貯留槽を設けて豪雨災害に備えるとしており、隣接する武蔵小杉や武蔵中原といったエリアへ、大量の水が流れ込むのを防ぐ機能が強化されます。また、建物の嵩上げやライフライン確保のための設備を導入されます。
さらに、公園内に夜間照明や約40台の防犯カメラを設置するなど、安全・安心を重視した整備を進める方針です。

多摩川の水害を防ぐためにも機能します

整備のスケジュール

整備スケジュールとしては、旧市民ミュージアムの解体工事を皮切りに2025年10月から着工し、2029年度末の完成を目指すとしています。

2029年度末の完成を目指しての一大プロジェクトです。老朽化した施設を一新し、J1・川崎フロンターレの本拠地である陸上競技場は、3万5千人規模の「球技専用スタジアム」へと生まれ変わります。競技場やアリーナの刷新だけでなく、屋根付きプールを含むスポーツセンターや、カフェ・温浴施設などがも想定される自由提案施設の整備により、市民の日常的な憩いの場としての魅力が大幅に向上します。さらに、豪雨災害に備えた防災機能の強化や、夜間照明・防犯カメラの設置も進められ、安全・安心な「市民の誇り」となる緑地へと進化します。川崎のスポーツとウェルネスの未来を支える、この壮大な計画の完成に期待が高まります。

(画像:川崎市、川崎とどろきパーク、PIXTA)

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